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第22話
俺達は当たり障りのない話をしながら一緒に登校する。
上手く距離をとりながら、仲良く暮らしている。
夜抱き合う時だけ、仮面は剥がれ落ちるけれど、俺達は決して「愛してる」とも「好きや」とも言わない。
執拗で意地悪で優しい愛撫にどんなに泣かされても、もうすっかりなれたデカいのに狂わされても、それだけは口にしない。
何の約束もしない。
俺は卒業したら家を出る。
その後どうするかもわからない。
でもいい。
多分コイツが来るか、俺がコイツに会いに行くやろ。
それくらいでいい。
でも、夏休みに星は見に行った。
アイツの中学生時代のロードバイクを借りて、自転車で100キロ位走って、山超えて。
つらかった。
何回も「帰る!!」って叫んだ。
アイツは大笑いしてた。
でも、そのキャンプ場でみた星空は、とてもとても綺麗で。
アイツの目みたいな透明な闇に星が溢れていた。
アイツとそれが見れるのが嬉しくて。
アイツの目に星が映る。
そこにも夜空があった。
幸せだった。
また100キロ走って帰らないとあかんから駄目や、言うてるのにアイツがテントの中でいらんことしてきて・・・。
帰りは自転車をバラバラにして袋にいれて、電車で帰るはめになった。
「輪行いうてなぁ・・・こういうのもありやねん」
しれって言うアイツをしばいたろかと思った。
俺は上手くやる。
俺は上手くやれる。
ずっとそうしてきたから。
お前に踏み込みすぎず、距離をとり、お前にとって安全な、そして俺にとって安全な場所にいる。
それでいい。
それでいい。
お前は俺を殺さへん。
俺を「愛してる」と認めん限り。
大丈夫や。
お前はホンマの意地っ張りや。
死んでも認めへんやろ。
俺に触るだけで長いこと我慢していた位の意地っ張りや。
あんなにドスケベやのに。
ほんなら大丈夫。
お前は死ぬまで俺を殺さん。
俺は愛されなくてもずっと・・・お前の近くにいる。
END
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