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オマケ 星の夜

 愛することは意志なのだと母は言った。  身体だけでも、心だけでも意味がないのだと。  身体と心が一緒でないなら、何の意味もないと。  そして母はそれをやり抜いた。  一つしかない身体をもって全てを愛するなら、身体さえ滅ぼしてしまわなければならないのだと。  母は本当に命がけで俺と父を愛した。  わが身を焼いてそれを示した。    炎に包まれながら母は微笑んでいた。   炎に肌を焼かせながら、髪を燃やしながら、母は叫び声一つたてなかった。  母は俺を見ていた。  俺は愛されていた。  炎の中、苦痛の中でさえ、母は、母は俺を愛し続けていた  母を焼く炎は愛だった。  だから、俺を抱き止める父を俺は嫌悪した。  母に燃やされることから逃げ出したから     父は母とは違う人を今は愛している。  多分、父は母を愛してはいなかったのだ。  いや、違う、母と同じようには愛していなかったのだ。  時間が変われば、身体が無くなれば失う愛。  それは仕方ない。  そんなもんなのだ。  そんなもんなんや。  でも、俺はそんなものはいらない。  そんな意志のないものはいらない。  何かあれば簡単に消えてしまうものはいらない。  あちこちで身体をつなげあい、かるく口にしあう愛など俺にはいらない。  俺が欲しいのは・・・炎で焼かれてもなくなることのないモノだ。  身体の機能を全て焼き尽くされる瞬間まで、炎の中から俺を見つめる目だ。  あんな風に愛されたなら、あんな風に思われたなら 、  あんな風に愛したい、あんな風に思いたい。  焼いてしまいたい。  焼かれてしまいたい。  苦痛にも死さえも恐れないで。   一度そんな風に愛されたならば、他のは全て霞んでしまうのだ。  俺は知ってしまった。  死にゆくその瞬間に到達して初めて愛は存在するのだ。  その瞬間の意志こそが愛なのだ。  命を失いながら俺を見て。  その瞬間でさえも俺を愛して。  炎の熱さを凌駕する想い。  炎の中俺にのばされた手。  叫び声一つ上げずに、俺を見つめる目。  そんな風に俺を愛して。  殺したい。   その瞬間の愛を感じるために。  それこそが愛だ。  俺に刺されても、俺に向かって微笑んで。  俺に喉を斬られても、唇だけで愛してると言って。  俺には腹を切り裂かれ、そこに俺のモノを突っ込んで犯されながら死ぬ時でさえ微笑んで。  たった一つしかない身体と心を俺にくれ。  俺も、同じ苦痛の中で死ぬから。  俺の身体と心を捧げるから。  ・・・彼に、それを望むことなど出来ない。  望んではいけないのだ。  俺は彼が好きだから。    

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