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第7話 この手は血に汚れて……それでも……

「きゃーっ」 「勇者が来たぞ。子供を隠せ」 「早く逃げて」  ガンッと石の塊を殴りつけたような音の後、ぼとりと落ちた首の後を追うように大柄な塊が地面へと倒れていく。 「いやーっ。あなたーっ」 「おとうさんっ」  響く声をどこか遠くに感じながら血も流れない塊をどこかぼんやりとした視線で見つめる。  ぎらりと輝く剣を白くなった指で握ったまま逆の手に光の力を持つ魔力を少し小柄な岩の塊へと向ける。  ジュワリと焼けた音の後ぱたりと倒れるいくつもの石の塊。 「逃げなさいっ」 「いやぁぁぁっ」  がりがりと石と石を擦りつけるような音の混じる言葉が耳を焼く。  どうせ姿が違うのならば言葉すらも違うものにしてくれれば、どれほど楽に壊すことができただろうか。  ズキズキと血を流す心と裏腹に柔らかく笑う。  怨めばいい。  憎めばいい。  それでも死にたくないから、殺されたくないから何も感じない風で次々と逃げるように走る人型の岩を追い、襲い掛かってくる岩と戦う。  その固そうな見た目に相応しい硬さと力で数度あてただけだというのに、剣はさすがに魔人の領のモノだけあって無事だが腕が鈍く痺れ今にも手から落ちてしまいそうだ。 「光の。あまり前にでるな」 「水よ」  腕が上げられないままに向けられた剣と俺の間に斧を手にした斧の勇者が滑り込む。  がしっと鈍い音が響き斧の勇者が低く呻く。  すぐさま杖の勇者の水の魔法が岩の塊へと穴を開けていく。  「目立つのは俺の仕事だろう?」 「それでも一人で前に出すぎだ」 「わかってる」  斧の勇者が振る巨大な斧が向かってくる岩の塊の首や腕を落とし、杖の勇者の魔法が足を打ち抜く。  向かってくるな。  逃げてくれ。  そんな身勝手な言い分が通じるわけもなく誰もが奥歯を噛みしめるようにしたまま武器を魔法を振るう。  倒れている岩の塊は未来の俺で、仲間たちなのだろう。  彼らも俺たちも何もかわらない。  ほんの少し運が悪かっただけ、運などどこで変わるかなんて誰もわからない。  だから……

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