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第11話 (魔×光)

「がぼ、がぁうがぁっ」  何がおこっているのかすらわかるはずもなく、口を覆う水が生き物のように喉から腹へと流れ込み息を止める。  いくら魔紋が身体を回復するといっても魔力が足りるはずもなくそのまま死んで当たり前だというのに、腕から流れ込む魔力が休むことなく魔紋に注ぎ込まれ死ぬこともできないまま真っ青に色をなくしたまま魚のようにぱくぱくとただ唇を動かし続ける。  どれだけの時間溺れ続けていたのか、突然ばしゃりと水が弾けひぃひぃと入り込む空気を吸うことしかできない俺の耳に、とっくに死んだと思っていた斧の勇者の悲鳴が聞こえてきた。 「この紋は便利だな。眷属ならば直接魔力を注げば回復させられるが、人はすぐに壊れるので使うこともできなかったのだが、これがあれば人を餌に飼っているモノたちは喜ぶだろう」  ぐっと向けられた視線の先にさきほどと変わらないようすで肩まで木に埋まったままの斧の勇者が真っ赤に顔を染め悲鳴のような声を上げ首を振っていた。  魔人に魔力を注がれたのか色を無くしていた魔紋は煌々と輝き、ぐらぐらと身体が震える度に悲鳴が上がり魔紋が光を強める。 「ひぃ、ぎぁがぁ、いぁ、がぁぁぁっ……ぁひぃ、ぁ止め……ぁぃぎぃ」  ぶるぶると木の幹が揺れる度に悲鳴は泣き声が交じり、すすり泣くように許してと哀願に変わっていく。 「アレも長くツガイを持たなかったから、我慢ができないのだろうな。何、満足すれば少しは落ち着く。我と同じで……」  ぶわりと溢れる魔力が赤い髪の青年から滲み黒い肌が赤く染まりその無駄な肉のない肌が服を伸ばしながら膨れ上がる。  冷たい顔立ちながらも整っていた顔も同じく赤く染まり唇は裂け太い牙が伸びていく。 「魔人は人型と本性とを使い分ける者も多いのだ。人型を取らぬものもいるのだがこちらだと力加減ができずに、弱い眷属をうっかりと殺してしまう。雑用が減るのも面倒だからな」 「ぁ、ぎぃっ」  ビキッボキッと掴まれていた場所が折れた痛みに悲鳴を上げる。 「思った以上に脆いな。これだと我の魔力が馴染む前に壊れそうだが、これに多めに注いでおけばどうにかなるか」  ベロリと長い舌が首の魔紋を舐めあげる。と同時に鋭い牙が突き刺さった。 「ぎぁっ」  すぐに頭が痺れるほどの魔力がそこから流し込まれる。  自分のものではない血液が逆流してくるような嫌悪感に身体が冷えるのに、同じほどに強い魔力に身体が熱く煮える。 「ぁ、ぁぁぁぁぁぁぁ」 「まだ甘くはないが、血はうまいな。我は血を求める種族ではないが、お前のモノならいくらでも味わえそうだ」

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