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第23話 (木×斧)

 細い指で短い髪から瞼の傷へと撫で、手触りがいい固い肌から生える突き出した胸元で私の細い蔓に締め上げられ絞り出された二つの小さな果実の一つを摘まむ。 「こんなに熟して……美味しそうですね」 「あー、ぁーぁ、ひぃぃぁぁ」 「ふふ、食べたりしませんよ」  果実を摘まんで強く引けば肌がさらに赤く染まり、先端の洞で私の蔓をみっちりと咥え込んだままの固い花弁の隙間から蔓の先端でも飲みきれなかった蜜を滲ませながらますます甘い香りを漂わせる。 「ああ、でも食べてしまいたい」  モノを食べない私から見ても美味しそうなのにこの果実は取れないらしい。  ツガイの身体を壊しては治してを繰り返していた私に、魔人に選ばれず、眷属からもいらないと言われた人を使って力加減の練習をするといいと魔の王に何人もの人をもらっていろいろ試した時に初めて知った。  それどころか少し加減を間違えるだけで人は簡単に死んでしまう。  身体の一部をとっても、力加減を間違えて潰してしまっても人は死んでしまうのだということに愕然とした。  人とは脆い生き物だ。  そして、私のツガイは魔の王と同じその脆い人なのだ。  ぼこりぼこりと汗に滲んだツガイの形のいい腹を中から名残惜しく揺らした後、ずるりと幾つもの歪な瘤がついたを私の蔓がツガイの洞を広げながら抜き出てくる。 「ぃぁ……抜くな……ダメっ……奥……から……ダメっ……」  カタカタカタとツガイが赤い顔を白く染めながら震えるのが不思議で全て抜き取らずにくちゅぬちゅと絡みつくツガイの洞の感触を楽しみながら入口でゆらゆらと揺らす。  もともと生殖して繁殖する生き物ですらないのにツガイの身体に包まれているだけで身体の一部が動物のように脈打つ気がするのが不思議だ。  戯れに魔物を捕えてその魔力の溢れる肉や核ごと取り込んだり、動物がたの眷属や人を包み込むように食ったりはしたものの、動物型のように自分の身体の一部を別の誰かの身体に包まれたいなどと思ったことはなかった。  なのに今はわずかに離れることすら躊躇ってしまう。 「でも、魔王様のツガイが抜けというのですから抜いた方がいいんですね」 「やだ……ダメっ……やめて……」 「魔王のツガイは私のツガイと同じ人ですから、何か大切なことかもしれません。私は人の生体には詳しくありませんから……」

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