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【12】

 俺はバスローブを羽織っただけという格好で、広いダブルベッドのど真ん中で先程からなぜか正座をさせられている。  ベッドのスプリングは幾分硬めだが、どうも体が安定しない。  その上両手は後ろに回され、フワフワのファーがついた手枷を嵌められた挙句、両手を鎖で繋がれているのだ。  この状況――って。 「――ふざけんなっ! なんだよ、これっ」  声をあげた俺を感情の読めない目で見下した華城もまた、バスローブ姿のまま俺と向かい合うように膝を突き合わせて正座している。  端正な顔立ちで背筋を伸ばしたその姿は凛々しく、いまにも武道の試合でも始めそうなほど精悍で逞しく、何より気迫に満ちていた。  だが――。 「見ての通りだ。不満か?」  不遜な態度で言い放った言葉は、とても聖人君子とは言い難いものだった。  わずかにはだけたバスローブの胸元は薄く筋肉を纏い、無駄なものが一切ない。いつだったか、この硬い胸板に顔を埋めた事を思い出す。  胸だけじゃない。その腹筋も腕も肩も……。一体、いつ鍛えているんだと思うほど綺麗に引き締まっている。  男らしい……と迂闊に口にすれば、彼を褒めることになる。それだけは、絶対に言わない。  だが、女だけでなく男の俺が見ても見惚れるその体躯は完璧といっても過言ではない。  俺は、そんな華城の傲岸ともいえる態度にムッとしたまま顔をそむけると、投げやりに声を上げた。 「()るなら、さっさと()れっ!」  じわじわと弄られるぐらいなら、凶器とも形容出来るあの長大なモノを躊躇なく突っ込まれた方が気が楽だ。  それがどんなものか十分すぎるほど分かっているし、それなりの覚悟は出来ている。  何より、この前のように焦らされることだけは何としても避けたい。  なぜなら、焦らされれば焦らされるほど、俺は……華城を求めてしまうから。  真正面に座る華城が、眉をハの字に曲げて大きなため息と共に呆れたように声をあげた。 「お前なぁ……。どんだけ色気がないんだ? せっかくの初夜なんだぞ? ムードを出せ、ムードをっ」 「はぁ? よく言えたもんだなっ。この状況で何がムードだ! それと……その初夜って言い方はよせ!」 「間違ってはいないだろ……? まあ、お前はすでに処女ではないが……」 「うるさい! お前だってヤリチンのクセに!」  本当にコイツは、俺をイラつかせる事しか言わない。  逃走しようと思えばベッドから飛び降りて逃げられるというのに、こうして怒鳴るだけに徹しているのは、心の奥底でこの前のようなキスを望んでいるから……なのに。  いや、もっと先のことも……だ。  俺を庇って吉家とあんな取引をしたことを知っただけでなく、ずっと片想いをしてきた相手だけに絆されない訳がないだろう。  今夜だけは素直に抱かれてやろうって――思ってたのに。  キュッと唇を噛んで俯いた俺の両頬を挟みこむように、華城の大きな手がグイッと顔を上向かせる。  黒い野性的な瞳に真っ直ぐに見つめられ、俺は動揺を悟られまいと目をそらした。 「――これからする質問にすべて答えろ。誤魔化したり、パスは認めない」 「なんだよ……それ」 「答えたら、そのたびにキスをしてやる。――一つ目……」  意味が分からずに何度も瞬きしながら、質問を発する彼の唇を見つめる。 「初体験は、いつだ?」 「そんなこと、お前になんで言わなきゃいけないんだよっ」 「いいから、答えろ」 「――中一」  彼の勢いに圧され、なぜか素直に答えている自分がいる。  言葉に誘導されるのではなく、華城が放つ雄のフェロモンに誘われる。新手の誘導尋問だ。  手で挟まれている頬がじわじわと熱くなっていく。それに気づかれまいと体を強張らせるが、不意にチュッと音を立てて唇にキスをされて驚きに目を見開く。 「二つ目。今まで寝た相手の人数は? 男女共にだ……」 「そんなの……覚えて、ないっ」 「ほう……。思い出せないほど多いのか?」 「そんなんじゃ……ない、けど。酔ってたり……とか、あったし……」  訝るように眉間に皺を寄せ、ぐっと端正な顔を近づけた彼に恐怖を感じて、頭をフル回転させて記憶を辿らせる。  そのほとんどが遊びで、一夜限りのものだった。己の欲求を満たすため――いや、ここ最近は華城への想いを拗らせた八つ当たりのようなセックスが多かった。 最後までしていない……という曖昧な記憶もあったが、人間、意外と過去の事を覚えているものだと我ながら感心する。 「十三――十四人? いや、十五……人?」  そう口にした途端、急に不機嫌な様相を見せた華城にビクリと肩を震わせる。  何も言わずとも分かる、怒りのオーラに俺は身の危険を感じた。  そして、彼から逃れるようにわずかに体をそらした時、思い切り顔を引き寄せられて噛みつかれるように唇を激しく吸われた。 「う……ぐぅっ」  でも、それはほんの一瞬で、すぐに華城の唇は離れていってしまう。  荒々しいキスは嫌いじゃない。もちろん、相手が華城に限ってのことだが……。 「三つ目……。本気で付き合った相手の数は?」  その質問に、俺は天井に視線を向けたまま動きを止めた。  思い返してみれば、俺は今まで誰とも本気で付き合ったことがない。  彼女も彼氏もいたが、俺としてはあくまで友達の延長のような感覚で、相手の方が本気になると煩わしいとしか思えなくなる。そのせいで、さんざん揉めたこともあったが、俺は一度も引き摺っていない。  いつも相手から告白され「付き合って」と言われてきた、受身でしかなかった俺……。  しかし、自分から付き合いたい、愛されたいと思った人物は……今、一人だけいる。 「――ゼロ。でも……今は一人だけ。そうなりたいと願っている人は……いる」  俺の答えにまた苛立つかと思いきや、華城は何も言うことなく、さっきとは打って変わって唇に優しく触れるようにして啄んだ。 (え……。ちょっと……物足りない!)  急に襲われた寂しさに、彼の唇が離れていくのをじっと見つめてしまう。 「四つ目――。俺の事をどう思っている?」  低く掠れた声でそう問うた華城に、俺は迷うことなく声を上げた。 「ドS、鬼畜! 外ヅラいいくせに本性は最低、最悪のヤリチン男っ」 「即答だな……」 「間違ってないだろ……っ」  挑むようにドヤ顔で睨みつけると、彼は今一つ納得がいかないという顔でチュッと音を立てて唇を啄む。  その唇が離れたあと、今度は俺が口を開いた。 「俺もお前に質問する。絶対に答えろよっ。一つ目――初体験は?」 「小六……」 「――マジかよっ。じゃあ、二つ目!」 「おい、せっかく真面目に答えてやってるのに見返りはないのか?」  確かに――。  まぁ、いろいろなパターンがあったことは否めないが、約束どおりきちんとキスはくれた。  俺はチッと小さく舌打ちして、不自由な腕を後ろにしたまま、腰を後ろに突き出すように顔を近づけると、彼の唇にそっとキスをした。 「――悪くないな」  唇が触れ合ったままの状態でニヤリと笑う華城に急激な羞恥を覚え、俺はムキになって言った。 「うるさい! 二つ目――今までセックスした相手の人数。もちろん男女共にだ……」  華城は自身の長い指先を顎に当てて真剣に考えている。  かなり長い時間そうしているものだから、聞いた俺としては、だんだん不安になってくる。  確かに、この完璧ともいえる容姿――いや、あの長大なモノを振りかざせば男女問わず引く手数多だろう。 「――十八……十九人か」  自分の事は棚上にして、華城の口から出た思いもよらない人数に、うっと低く唸る。  この顔で、この体で、この唇で……そいつらを悦ばせてきたと考えるだけで、ただただムカつく。  俺の知らない顔を何人もの男女に見せて来たなんて……許せない。  怒りに任せ、ぶつけるように唇を重ねてから強引に舌を滑り込ませる。  一瞬瞠目して驚いた華城だったが、なぜか嬉しそうにすっとその目を細めて、俺の舌に自分の舌を絡めてきた。  危うく、このまま持っていかれるのでは……というところで逃げ、俺は肩で息を繰り返した。  彼が仕掛けるキスは、俺にとって弱点にしかならない。 「み……三つ目っ。本気で付き合った人数は?」 「――二人」 「え……」  思わず小さく声をあげてしまった。俺が期待していた人数――ゼロ。 あっさりと期待を裏切るあたりが彼らしいが、どうも腑に落ちない。 華城が本気で恋をした相手が気になって仕方がない。俺みたいに不遜でひねくれ者は、今までにいなかっただろう。 そんな不安が、自分で気づかないうちに顔に出ていたのか。まるで心を見透かされたかのように、華城は小さく笑ってからボソリと言った。 「安心しろ。今はもう終わってる……」  その言葉に安堵する自分に腹が立つ。どうして、コイツの一挙一動にいちいち動揺しなきゃならないのか……と。  渋々という動きで顔をわずかに傾けて、彼の唇の端にそっとキスをする。 「次……四つ目。俺の……こと、どう……思っている?」 「強がりで傲慢、誰とでも寝る尻軽ビッチな女王様。だけど……超がつくヘタレ」  楽しくて堪らないというような顔で、つい緩んでしまう口元を必死に堪えようとしているのがアリアリと分かる。  そんな華城に、俺の苛立ちはさらに加速していく。 「一言、余計だっ」 「間違ってないだろ?」  ニヤリと笑いながらぐっと顔を近づけた彼は、俺からのキスを待つことなく唇を啄んだ。  そして、触れるか触れないかという距離をキープしたまま、熱い吐息交じりに囁く。 「――最後の質問。お前が欲しいものは……なんだ?」 「あ、それ。俺もお前に同じ質問っ。同時に答えようぜ。せーのっ」 「――お前っ」 「――お前だよ」  互いの声が重なった瞬間、俺は猛烈な勢いで唇を貪られた。  彼の厚い舌が口内を犯してくる。歯列をなぞり、俺を誘うように何度も舌を吸いあげる。  吸引に耐えきれなくなった俺は自ら舌を伸ばし、その軌跡を追いかけて絡ませた  互いの唾液が混ざり合い、静かな部屋に小さいはずの水音がやけに大きく響き、触れ合う息づかいが獣のそれに似てくる。  これほど長いキスは経験したことがないというほど、飽くことなく互いの唇を求めた。  その間にも俺の体には欲情した熱がわだかまり、力を持ち始めた浅ましい欲情の証が、節操なくバスローブの合わせ目から顔を覗かせ、フルフルと震えている。  銀糸を纏わせながら唇を離し、息も絶え絶えに俯いた視線の先には、華城の凶暴な熱が同じようにバスローブの合わせ目を割り開くように揺れている。  赤黒く変色し、幾筋もの血管を浮き上がらせる太い雄茎。そして……大きく張出したカリを備えた先端からは透明な蜜が溢れていた。  俺だけじゃない。華城もまた――欲情している。  ぷっくりと膨らんだ蜜をあふれさせるその先端に口づけようと身を屈めた時、いきなりすっと身を引かれ、俺はバランスを崩して前のめりになり、尻を高く上げた格好のままシーツに顔を埋めた。 「ん――っぐ!」  両手を後ろで固定されているため、自力では上手く起き上がれない。それに加えて、長時間の正座を強いられた両足の感覚はすでになくなっていた。 「華城っ!」  くぐもった声で叫ぶと、彼はベッドサイドに置かれたナイトテーブルの上に手を伸ばし、指先で何かを摘まんで俺の前で揺らして見せた。  それは小さな鍵で、おそらくこの手枷を解錠出来るものなのだろう。 「偶然とはいえ、かなりいい眺めだな……。このまま犯したい気分だ」 「この鬼畜男! さっきの、撤回! ナシだっ、ナシ!」 「怒るな。せっかくの美人が台無しだぞ……。拘束プレイは、またの機会にしてやる」  そう言って、俺の背中を抱き込むようにして体を起し、膝裏に手を抱えてベッドの端に腰かけさせてくれた。  痺れたままの足を絨毯に投げ出して、俺はなんとか体を支えた。  背後でカチャリという音がして鎖がシーツに落ちると、両手が自由に動かせるようになった。  無理な姿勢で拘束されていたせいで、腕を前に持ってくるとゴキッと肩が妙な音を立てる。  だが、手首に嵌められたフワフワの手枷はつけられたままだ。 「これも……」  おずおずと両手を差し出してみたが、華城は外す気配がない。  そうしているうちに、痺れていた足に感覚が戻り始めて、ビリビリとした痛みが襲う。 「う……ぅわぁ……っくぅ……っ」  指をわずかに曲げただけでも、悶絶するほどの痺れに俺は身を捩って身悶えた。  その足元に片膝をついて座った華城が面白そうに見上げている。 「お、お前……。今、絶対に触るなよっ。触ったら……っ」 「触ったら?」  悪戯を思いついた子供のように、黒い瞳が妖しげに光る。 (あー。コイツ……絶対、触る。俺の嫌がることするの好きだもんなぁ……)  これから訪れるであろう苦痛に半ば腹を括り、シーツに後ろ手をついて体を支えたまま痺れが治まるのを、奥歯を噛みしめたまま待った。  ついでに……コイツが指で突いてくることも予想して。  だが、華城は手を出すことなく、そんな俺をじっと見上げている。  足元に鎮座する大型犬は、飼い主の顔を見上げたままだ。俺の様子を見て笑うでもなく、ただ黙ったまま……。  しばらくして、やっと足の裏に絨毯の毛足の感触を感じることが出来ると、俺はそれまで詰めていた息を長く吐きだした。  それを待っていたかのように華城が俺の右足を恭しく持ち上げて、自分の顔の位置で止めた。 「何……するっ」 「――俺の女王様に忠誠を誓おうと思ってな」  そう言うなり、俺の足の親指の先にチュッとキスをした。 「お前、何やってんだ!そんな……足にキスなんて……っ」 「強気で傲慢、ワガママで可愛い女王を守るのは騎士(ナイト)の役目だ……。これからはお前だけを守る」 「なに、王子様みたいなこと言ってんだよ」 「――王子になんて渡すものか。お前は俺のものだと言っただろ?」  わざと大きなリップ音を立てて指先から甲へ。そしてくるぶしを経て足首へとキスを繰り返す。  完全に感覚を取り戻したつま先が、くすぐったくて仕方がない。  指先をもぞもぞと動かして何とか逃げようとするが、がっしりと掴まれた足先は彼の大きな手に包まれたままだ。  舌を伸ばして、俺に見せつけるように指の間を舐め上げる。  ゾクゾクとした甘い痺れが背中を這いあがり、腰がピクッと跳ねた。 「普段は今までのお前で構わない。だけど……俺の前では、抱えてるもの全てを曝け出せ。そして……甘えてくれ」 「華城……」 「俺もまた、普段は忠誠を誓う真面目な騎士(ナイト)だ。だが……お前の前では本来の姿を見せる。獰猛で貪欲にお前だけを求める獣の姿を……」  くるぶしを口に含まれ、強く歯を立てられる。 「んぁっ……ん」 その痛みがジワリと快感に変わる。 顎をそらせ鼻から抜ける甘い声を発して、羞恥に頬が熱くなる。 「この私に慈悲を……。いや――『ご褒美』をいただけますか? 女王様(クイーン)……」  欲情し熱っぽく濡れる彼の目力にヤられた俺はわずかに上体を傾けると、ゆっくりと手を伸ばしながらシーツに体を預けた。  華城は足先を抱えたまま唇を押し当て、期待のこもった目で俺からの答えを待っていた。 「――褒美をやる。ただし……」 「なんでしょう?」 「下剋上を認めるのはベッドの上だけだ。――お前の腕の中では……その……可愛い子ウサギでいてやる。だから……」  言いかけた言葉を塞ぐように華城が俺の上に覆いかぶさるように倒れ込むと、唇を重ねながら息を荒らげた。 「だから……?」  これ以上は待てないというように、今までになく低く甘い声で囁いた華城の首に両腕を絡めると、キスで濡れた唇を誘うように舐めて見せた。 「――大切に……可愛がれっ」  そう言い終わらないうちに、華城は俺が着ていたバスローブの紐を解くと、力ずくで引き抜いてベッドの下に放り投げた。  天井を仰ぐように勃起したペニスからは、だらしなく蜜を溢れさせて下生えを濡らしていた。胸の飾りも、何かを期待するかのようにツンと硬くしこり、わずかに色づき始めている。  まるで、男を誘う娼夫のようなアラレのない姿を晒した俺は、彼の首に両腕を絡めて耳朶を甘噛みした。  膝を立て、彼の下肢を挟み込むように脚をからませて完全勃起状態のモノを、まだバスローブに覆われている彼の灼熱に擦りつけた。 「騎士……」 「煽るな……淫乱ウサギ」  すでに体内に籠った熱でうっすらと汗ばんでいるにもかかわらず、触れ合っている肌が心地いい。  ずっしりと重く圧し掛かる彼の体に支配され、この力強い腕で守られている。興奮しているのに、なぜか落ち着く。  今まで何人もの男女と経験してきたが、こんなにも触れ合った体がしっくりくることはなかった。 「――狼しゃん、僕を食べて……とでも、言おうか?」  クスッと目を細めて笑ってみせると、彼もまた妖艶に微笑む。  そして、俺の胸の突起に舌を這わせ、もう片方は指できつく捻りあげた。 「ひぃ……っ」  喉の奥から声にならない声が漏れる。じんわりと痺れる痛み、でも確実に快感となって全身に広がっていく。  赤く色づき熟れ始めた突起を舌先で愛撫しながら、華城が低い声で囁いた。 「――上等だ」  彼の大きな掌が胸から脇腹を通って腰を愛撫する。  まるで柔らかな毛並みでも確かめるような丁寧で滑らかな動きに、自然と息が上がってくる。  カラオケボックスで暴挙をはたらいた男の愛撫とは思えないほど、優しくて気持ちがいい。  その手が、二人の体に挟まれた欲望の証をするりと撫でた。 「どんだけ濡らしてるんだ……」  下生えに蜜を広げるように掌で乱暴に撫でてから、不意にギュッと強く掴まれて何度か上下に扱かれると、その気持ちよさに腰が揺れるのを止められない。  時折、華城の指の間からクチュリと卑猥な音が聞こえ、自分がどれだけはしたなく蜜を溢れさせているのかが分かる。  その合間にも胸や腹にキスを繰り返し、時々きつく吸いあげては俺の白い肌に赤い花びらを散らしていく。  まるで、自分のものであるかを誇示するように、それは何度も繰り返された。 「あぁ……ん、き……しぃ……、気持ち……いっ」  もっとイイことを期待して自然と出てしまう甘い声に、華城は何かを窺うように上目づかいで俺を見た。  今の俺はどんな顔をしてるんだろう……。  演技でも何でもない、素の自分を見せるのは少し恥ずかしく、抵抗もある。  しかし、そんなことを考える隙を与えない彼の愛撫にすべてを曝け出していた。 「もっと……して……っ」  羞恥に耐えながら小さな声で強請ってみるが、華城はペニスを扱いていたその手をすぐに離してしまった。  急に中断されたことで、いき場のないもどかしさにムッと唇を尖らせるが、華城はそんな俺を完全に無視して一旦ベッドから下りると、ナイトテーブルからジェルの入った容器を手に再び俺の足元に両膝をついた。  そして、俺の膝がしらに手を添えて両膝を大きく割り開くと、双丘の奥で慎ましく愛撫を待つ蕾に軽く触れた。 「あまり放っておくと、こっちから苦情が出そうだからな……」  薄い粘膜を指先でそっと撫でられただけでヒクリと収縮を繰り返す俺の蕾が何を求めているか、華城は気づいていたようだ。  ペニスへの愛撫はもちろんだが、貪欲な俺が求めているのはもっと『いいモノ』だ。  華城は透明のジェルを手にたっぷりと出し、それを何度か手を擦り合わせて温めてくれる。  セックスの最中にこれほど気を使ってくれる相手は今までいなかった。  俺をベッドに押し倒すなり、やりたい一心で強引に指を突っ込んだり、やたらと舐め回したり……。  不快を感じることで興醒めし、演技をすることが当たり前のようなセックスばかりだった。  俺って男を見る目がないかも……と、一時は自信喪失したこともあったが、今は「俺の目に狂いはなかった」と言い切れる。 「痛かったら我慢せずに言えよ。そこまで俺も鬼畜じゃない」  どの口が言う?――と思いながらも、ここは素直に頷いておく。  本当は、彼自身一番余裕がないことは一目瞭然だった。先程からバスローブの合わせ目から顔を覗かせている凶暴なペニスがビクビクと震えているのが分かる。  ぬらぬらと蜜を滴らせ、彼の下生えを濡らしている光景は、俺が見ていても思わず生唾を呑むほどエロい。  そんな自身には一切触れさせようとせず、献身的に愛撫を繰り返し、俺を悦ばせようとしてくれているのが分かる。  カラオケボックスで見たあの姿が華城の本性だ。抑えていたものが不意に堰を切り、余裕なく暴走した欲情をぶつけられた俺だったが、今となっては悪くないと思っている。  優しいばかりのセックスなど、ただのなれ合いでしかない  本性を抑えた彼は、借りて来たワンコのようでつまらない。この男の理性を突き崩し、獣の姿を露わにするには……。  俺は両腕を自身の腿の内側に差し入れ、まだ潤んでもいない蕾に指を差し入れると、ぐっと力を入れて左右に割り開いた。そして――。 「早く……欲しい、ん……だけど……」  まだ解れていない蕾は硬く、周囲の粘膜も指を引っかけただけで攣れた痛みが走る。  それでも、この男の本来の姿が見たくて、俺は強請るように腰をくねらせた。 「狼しゃんの……大きいの、欲しいから……。はやく……濡らして……」  素の俺だったら絶対に言えない言葉が、自然と口をつく。――というより、こんなセリフは今まで誰にも言った事はない。  ベッドの上でもプライドを崩すことなく、不遜でしたたかな女王(クイーン)を演じてきた。 でも、もうその必要はない。華城の前ではそんな安っぽい娼夫の真似などしなくてもいいのだ。  思い切り甘えさせて、完全に骨抜きにして……俺だけを愛して欲しい。  男らしい彼の喉仏が上下に動いたのを見逃さなかった。華城はあくまでも平静を装ってはいるが、片方の眉がピクリと上がったことを見逃さなかった。 ジェルを纏った指先が誘われるように俺の蕾へと近づき、割り開いた粘膜の中へ早急に侵入を開始した。  入口を丁寧に愛撫し、徐々に奥へとジェルを馴染ませながら進んでいく。  もうすでに熱を帯びた内部はジェルを溶かし、彼の指先の動きに合わせてクチュクチュと音をたてはじめる。  そのムズ痒さに、俺は蕾から手を離し、膝を立てたまま自分のモノに伸ばした。  しかし、素早くその手を抑え込まれ、シーツに縫いとめられる。 「ったく、ちょっと目を離すとこれだ……。もっと楽しませろ」  欲情に濡れた低い声にブルリと体を震わせると、彼は身を屈めてやるせなさそうに揺れているペニスを口に含んだ。 「んあぁぁ……っ」  彼の温かな口内に含まれる同時に、厚い舌が茎を舐め上げる。  蕾には華城の骨張った二本の指が奥まで入り込み、バラバラに動きながら内部を解していく。 「いや……ダメ……っ、それ……いやぁぁぁ!」  弱い場所、二ヶ所を同時に攻められれば、カラオケボックスでの比ではなくなる。華城の指が底知れぬ快楽をもたらしてくれることを知っているこの体は、貪欲に奥へと引き摺りこもうとする。  中の粘膜が蠢動し、入り口の筋肉がキュッと彼の指をきつく食む。俺はその感触をダイレクトに脳に伝えるべく腰を小刻みに揺らした。 ムズムズとした疼きと、前をきつく吸い上げられる痛みに体が高みへと昇っていく。 「あぁ……ダメ。も――イ、イク、イク……っん、っふあぁぁ!」 内腿を小刻みに痙攣させながら絶頂を極める。  後孔で彼の指を咥えたまま、一気に隘路を駆け上がってきた灼熱を華城の喉奥に叩きつける。 それを美味そうに呑み下すのを涙で滲んだ視界で見つめながら、ゆっくりと体を弛緩させた。  残滓さえも惜しいと言わんばかりに吸引しながらペニスを口から引き抜いた華城は、白濁で汚れた唇を舌で舐めながら妖しい光を黒い瞳に湛えて微笑んだ。 「今からこんな調子じゃ、淫乱ウサギの体はもたないぞ? 明日、立てなくなったら抱いて出勤してやるから心配するな」 「――やらぁ。恥ずかしい……だろっ」 「それが騎士(ナイト)の仕事だからな……」  不敵に笑った彼の指が三本に増やされ、その長い指先が俺のいい場所を探り当てる。  中で膨らんだシコリをグッと押されると、俺は打ち上げられた魚のように体をビクンッと大きく跳ねさせて、声を上げた。 「あぁ――っ!」  華城は口端を片方だけ上げて「ここか?」と問う。分かっているくせに、あえて聞くところが彼のイヤらしいところだ。  俺は、何度も首を縦に振って頷くと、楽しそうにそこばかりを執拗に攻め立てる。ムズムズと腰の奥で疼いていたものが大きな熱の塊となって俺の体を駆け巡る。このままではもう一度極めてしまいそうだと思った瞬間、そこを弄んでいた指がすっと離れていってしまった。  ギリギリのところまで焦らされて、俺の体には行き場を失った熱が逆流して籠り始める。  処女ではない俺の後孔は、少し解せばすぐに順応し、一般的な大きさのペニスならば簡単に受け入れられるくらいの柔軟性はあるはずだ。その場所をこれでもかと執拗に解している彼に、それが意地悪なのか、それとも本当に心配してのことなのか判断がつきかねる。 「騎士……っ! も、我慢……で……ないっ。入れ……てっ!」  その根気比べは、華城の焦らしに耐え切れなくなった俺があっさりと白旗を上げた。  我慢できないというように声を上げると、ニヤリと不敵に笑った彼を見て、やっぱりただの意地悪だったのかと悔しさに奥歯を噛んだ。  でも……。人を弄っている余裕などないのは華城の方だと分かっている。  彼は着ていたバスローブを性急に脱ぎ捨てると、薄っすらと筋肉を纏った身体を露わにした。  その姿にゴクリと唾を呑みこんだ俺の膝裏に手をかけ、さらに大きく脚を割り開くと、その間に逞しい体を滑り込ませた。  勃起した昂ぶりが俺の蕾を突くように押し当てられると、たったそれだけで期待に歓喜し粘膜が収縮を繰り返す。  かなりの質量にまで膨らんだそれに華城は自身の手を添え、溢れた蜜を塗りつけるように先端を何度か蕾に擦りつける。 (あぁ……気持ちいい!)  クチュッと小さな音がして、俺は心地よさにうっとりと目を細めた時だった。華城の大きく張り出した先端がいきなり強く押し込まれ、蕾の粘膜を目一杯広げながら中に侵入してきた。 「ん――はぁっ!」  俺が焦れるほどたっぷりと解したにもかかわらず、凶器と揶揄する華城の太く硬く、そして長いペニスがミシミシと音を立てて蕾の入口を割り裂かん勢いで入ってくる。広げられた蕾の薄い襞を焼くような熱さに、俺は眩暈を覚えた。 「ぬあぁ……っ! き……きつ――いっ」 「――やっぱり酔っていた方が楽だったな」 「なにっ?」 「こっちの話だ。ほら、もっと力を抜け!」  グイッと腰を押し進める彼の動きに、攻め込まれる何かから身を守ろうと防御反応が働き、無意識に体に力が入ってしまう。  後孔で彼の存在を意識するたびにきつく喰い締めてしまい、なかなかスムーズに入っていかない。 「ムリ……、それ……はい、ら……ないっ!」 「お前……他の男のチンコは良くて、俺のはムリだっていうのか? せっかく恋人になったっていうのに……酷い奴だな」 「ちがっ! そ……いう、んじゃ……ないっ!」  慌てて否定する俺の体に重なるように圧し掛かってきた彼は、大きな手で俺の頬を挟みこむと優しく唇を重ねた。 「んん――っ」  華城の体が上にずり上がったせいで、繋がっている場所がグリっと抉られる。その圧迫感に戸惑いながらも、ねっとりと舌を絡ませてくる彼の息遣いに俺は顎を上向けた。  口内を愛撫するかのように歯列から側壁、そして舌の付け根までをゆっくりとした動きで犯していく。  キスだけで達することが出来るという噂を耳にするが、その場所も相手次第で性感帯に変わると言われる所以が分かった気がする。  ハッキリ言って……彼のキスは今までのどの男よりも上手い。   俺の場合、彼とのキスだけで勃起してしまうくらいだから、セックスの最中にするキスほど極上なものはない。  悔しいけれど、認めざるを得ない彼の舌技に翻弄され、ぼんやりと霞がかかり始めた脳内に快楽物質が広がると同時に体中の力がふわりと抜けた。  その瞬間を見逃すことなく華城は腰を一気に押し進め、長大なペニスを最奥まで突き込んだ。 「ん……んぐっ……! っふ――ぅ! うあ……ん、ぐっ――ふぅ」  キスで口を塞がれたまま下肢にかなりの衝撃を覚え、俺は目を見開いたまま声にならない声をあげた。  その声はすべて彼の口内に吸収され、もはや『声』ではなくなっていた。  ジェルと腸内から分泌される体液、そして華城の蜜によって潤み始めた後孔。卑猥に広げられた粘膜を纏わりつかせながら小刻みに出し入れを繰り返す赤黒く充血した華城の熱棒。 広げられた双丘の間に彼の下生えの感触を感じて、あの凶暴なものをすべて呑みこんだ事を知る。 「入ったな……」  銀糸を長く引きながら唇を離した華城は、安堵したように笑みを浮かべ、荒い呼吸を繰り返している。彼もまた、狭い器官に捻じ込んだ自身のモノが圧迫され、おそらく痛みを感じているはずだ。 彼はといえば、最奥に達した瞬間、彼の背中に回していた手にとてつもない力が入っていた。指を鉤状に折り曲げ、血が滲むのでないかと思うほど肌に爪を喰い込ませている。  下半身にずっしりとした重みと熱を感じ、内部にある無数の襞が膨大な質量に埋め尽くされ、無理やり広げられている空間が息苦しさを覚える。  内臓が上に押し上げられ、何度も嘔吐きそうになっているのは確かだ。 「う……うご、く……なっ」  呼吸もままならない状態で、俺は涙目のまま声を上げた。しかし、華城は俺の言葉に口元を綻ばせながら、汗で張り付いた髪を指で退けながらこめかみにキスを繰り返した。 「すぐに馴染む。この形を覚えているならな……」 「な……なに、言ってる……っ」  以前、一度でも繋がったことがあるような華城の言い方に目を瞠った瞬間、グリッと捻じ込むように最奥を突かれ、俺は背中を弓なりにしてシーツを掴んだ。 「い、やぁぁ……! う、動くな……て……いっ……て――だろっ!」 「ほら……。濡れてきた」  体全体を揺するように腰を動かし始める華城に、俺はシーツを掴んだまま身悶えた。  ジェルを使っていても、さすがにあの大きさのモノを受け入れるとなるとそう簡単にはいかない。まして限界まで引き延ばされた蕾は引き攣れ、無理をすれば裂傷を負いかねない。  しかし、我慢に我慢を重ねてきた彼が入ってきてしまった以上、先程までの優しく労わってくれる状態が続くとは思えない。  鼻息荒く、もうすでに本性である狼の様相を見せ始めている彼の動きに、俺は悲鳴を上げた。 「やめ……っ。も……痛いっ。き、し……抜けっ!」 「――っく。処女並みにキツイな……。もう少し我慢しろ、すぐに悦くなる」  俺が歯を食いしばる度に、彼のモノもギュウギュウと喰い締める。  それでも先程よりもはるかに動きが滑らかになってきた熱棒の抽挿をやめない。  クチュクチュ……と小さな音が聞こえ始めると、腰を振りながら俺の首筋にキスを繰り返す。  記憶を失くしたあの夜――。何者かがガッツリ残した首筋の情痕。それがあった場所に唇を強く押し当てて、きつく吸いあげる。  まるで、あのキスマークに恨みでも抱くかのように……。 「うぁ……ぁあ……っん」  あの夜の事はハッキリ言って覚えていない。でも、翌朝目覚めた時、猛烈な腰の痛みと倦怠感、そしてなぜだか爽快感を感じていたことは否めない。  二日酔いであるにもかかわらずスッキリしている自分がいて……。失恋したにも関わらず不謹慎だと自己嫌悪に陥りそうになったのは確かだ。  記憶を失くすほど泥酔しても、俺のペニスは相手の愛撫に反応してちゃんと勃ち、それなりに快感を得て吐き出した……ということになるのだろう。どこまで淫乱な体だ。  そんな自分を華城以外の男に見せたなんて――一生の不覚。  でも――。この感じ……何となく前にもあったような気がする。  首筋の痛みが快感にすり替えられていく。掴んでいたシーツを手放し、俺は華城の首に両手を絡ませる。 それまで苛まれていた苦痛から、突然訪れた快感の尻尾を掴んだ瞬間だった 「そう……。力、抜け……」  低く甘い声が吐息と一緒に耳に吹き込まれる。  まるで暗示をかけられているように、俺は自ら腰を揺らし、中のモノを喰い締めた。 「もう、大丈夫だ……。安心して俺に委ねろ……」 「き……しぃ……っ」  最奥に突きつけられている先端がずるりと一気に引き抜かれる。  このまま抜けてしまうのではないかと括約筋をキュッと締めると、大きく張り出したカリがいい場所を掠っていく。そして、抜けるギリギリの所まで引き抜いたペニスを、今度は躊躇なく一気に最奥まで突き込まれた。 「うぁぁぁっっ!……や……やぁ……くふっ」  一度放ったにもかかわらず、もうすでに腹につきそうなほど反りかえっているペニスの先端から勢いなく白濁が吹き上がり、茎を汚しながら流れ落ちる。 「――イッてるのか? トコロテンだぞ」 「やぁ……は……恥ず、か……し……。見ない……でっ」 「お前の全部を見ることが許されるのは俺だけ。俺に全部を見せるのはお前の義務……。さて、本気でイクか?」  華城がゆっくりと上体を起こし、俺の腰をがっしりと掴んで引き寄せると結合部がより密着する。  華城は、その繋がっている部分に視線を落としながら、大きく腰を動かし始めた。  腰を引くたびに薄い粘膜を纏わりつかせながら出入りする華城のペニス。どれほど卑猥な光景だろう。 「あ……っ。あ、あぁ……っ!」  体が真っ二つに裂けてしまいそうな衝撃が脳天まで突き抜ける。  押し上げられた内臓が肺を圧迫し息苦しさを感じるが、脳に酸素がいかない状態もまた、ふわふわしていて堪らなく気持ちがいい。 (き……気持ち、いいっ!)  俺たちの体の相性は?――なんて無粋なこと、考えるだけ時間の無駄だったようだ。  気持ちも通じ、体も繋がった。これ以上の悦びはない。  それなのに、もっと華城を欲しがる自分がいる。 「騎士ぃ~。気持ち……イイよぉ……っ。もっと……も――っと……ちょ……らいっ」  彼の背中に思い切り爪をたてて女のような嬌声をあげる。  恥ずかしいほど濡れた声が部屋中に響いて、次々に湧き上がる劣情をさらに大きく増幅させていく。  そんな俺の声に応えるように、華城の腰の動きがだんだんと早くなり、パンパンと皮膚がぶつかり合う破裂音が激しさを増す。 「やば……っ!――玖音っ……も、……締める、なっ!」  眉間に深く皺を刻みながら低く唸るように声を発した華城も、絶頂が近いことを知る。  長大な熱棒が激しく出入りし、粘膜を擦りあげるたびに閉じたままの目の裏で白い火花が散った。  呼吸も絶え絶えで上手く酸素が取り込めずに、酸欠で頭がボーっとしてくる。  それでも、体は華城を求め確実に頂上へと昇りつめていく。 「あっ、あぁっ……! あぁ……ぁ。きも……ち……い……! 変に……な、るっ……ぅ」 「お前の中に……全部……出す、ぞっ!――零す……んじゃ、ない……ぞっ! ぁう……ぐ――っあぁ!」 「いゃ、いやぁ……! イ、イク……イッちゃうから……! 騎士……も、や……やらぁ――っ!」  ビクビクと全身を震わせ、これでもかというほど背を弓なりに反らせたまま俺は派手に白濁をまき散らした。  そして華城もまた、大量の灼熱を俺の最奥に迸らせながら、なおも激しく腰を振り続けた。  敏感になった場所を力の衰えない硬いペニスで擦られ、俺は足の指をシーツを掴むようにギュッと丸めたまま、またイッてしまった。  短いスパンで立て続けに二回もイカされ、頭の中が真っ白になったまま何も考えられない。それなのに、淫乱の本能故か、腿の内側がブルブルと痙攣したまま、強張らせた体を弛緩させてぐったりとシーツに沈んだ後も、華城と離れたくなくて彼の下肢を脚で挟み込んだままだった。 「――玖音、このまま抜かずにいくぞっ」 「ひゃ――ぁ?」  熱い吐息交じりに微かに聞こえた華城の言葉に驚いたが、停止したままの思考回路では何と返していいのか分からない。  そうこうしている間に、繋がったままの体をくるりとひっくり返され、胸をベッドに押し付けるような格好にされる。 「おい、ケツあげろって……。おねだりは?」 「ん……ん……っ。騎士ぃ~、も、許し……てぇ……」 「まだまだ足りないっ。お前をもっと悦ばせて、俺なしじゃ生きられない体に作り替えてやる」 「ひゃぁ……っ。もぉ……変になっちゃうから。壊れちゃう……からぁ~っ。いやぁ――っん!」  強引に腰を掴みあげられ、再び腰を突きこまれた。  中に吐き出した白濁が押し出され、結合部から溢れて腿を伝い落ちる。  すっかり研ぎ澄まされた感覚では、その流れる感触さえも新たな疼きとなって、更に快感へと繋がっていく。 「可愛い玖音……。ほら、啼けっ。思い切り啼けっ」 「あん……あぁぁ――ん! っ……も……やらぁぁぁ――っ!」  汗に濡れた髪をシーツに押し付けた俺は、尻を高く掲げたまま彼の凶悪な熱棒に貫かれ、快楽の中で何度も意識を飛ばした。  華城の恐るべき凶器は、すべてを出し終えるまで一度も抜かれることはなかった――

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