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第12話
「僕に任せてくれたら、気持ち良うしたげんのに・・・」
天使は俺の手に身を任せてながら言った。
ホテルに入っていた。
「また、いつかお願いするかもしれへんけど、今日は俺の好きにさせて」
俺は笑った。
肌を撫でる。
そして、唇を落とす。
「んっ」
天使は気持ちよさそうに声をこぼす。
リラックスして、笑ったりして、楽しそうで。
こんなセックスでいい。
俺は思った。
天使はホテルに入るまえに決まり悪そうに打ち明けた。
「僕らは薬でも使わん限り・・・感じないねん」
気持ち良くないわけではないとのことだった。
イクのもイカないのも、勃起するもしないも、コントロール出来るのだと。
「どんなことされても、望むようにしなあかんから・・・痛いからイけないではすまないから・・・」
何されたんや、と気が狂いそうになったが、とにかくプロである天使達はセックスに我を無くすことはほぼないのだと。
我を無くすフリはしても、と。
薬を使えば別だけれど、いつも薬を使っていたわけでもなく、薬は逃げ出す可能生の高い街中でのデートコースなどについたオプションなのだと天使は言った。
麻薬を常用させて、せっかくの内臓を台無しにするわけには行かないという理由にはすがすがしささえ感じた。
売春出来なくなったら内臓を奪うからだ。
どこまでもひどい話だった。
「あなたとしたくないとかそういう話ではないねん・・・あなたに触りたいし、触られたい気持ちはすごく強い。快楽とか以上に。ホンマは感じてるフリとかをそうしとったみたいにしたらええんやろうけど・・・もうしたくないねん」
天使は切なそうに言った。
言いたいことは分かったし、演技なんかして欲しくなかった。
だから、俺は優しく触る。
単純な肌の触れ合いの気持ち良さは伝わるはずだから。
優しく唇を落とす。
軽く吸う。
「ふふっ」
天使がくすぐったいと笑う。
俺も笑う。
天使と最初にした、快楽に頭が焼き付いてしまうようなセックスじゃなかった。
でもこれはこれでよかった。
軽いキスを重ねて、背中を撫でながら、抱きしめる。
ひたすら優しく、俺は天使に触れた。
色んな奴らが酷くした分、優しくしてやりたかった。
快楽より優しさを伝えてやりたかった。
天使がほろほろと泣いた。
俺は焦る。
「あかんかった?」
俺の言葉に天使が首をふり、軽いキスを俺の唇に落とした。
「嬉しいねん」
天使が泣きながら微笑む。
俺達は軽いキスを繰り返しあった。
正直、この白いヤらしい身体を、むさぼり尽くしたい気持ちはある。
でもそれは、この人を使ってのオナニーにしかならないと思ったら嫌だった。
それなら、この人が気持ち良さそうにしてる、セックスにしては軽すぎるこの行為の方がずっと良かった。
「好きにしてええのに」
天使は呆れたように言った。
「好きにしてる」
俺は優しく天使の身体を撫でさすりながら言った。
天使は気持ちよさそうに身体を預けてくる。
多分マッサージの快感に近いのだろうけど、気持ちいいならそれでいい。
「全部にキスしていい?」
俺は言った。
「ええって言ってるやん」
天使は笑った。
指からキスしていった。
唇が触れたら宣言する。
「ここ、俺の」
天使は笑った。
腕、肩、首筋。
俺のモノにしていった。
胸、乳首。
本当にそっと唇を触れて宣言する、他愛もない愛撫だった。
なのに、少し天使の様子が変わってきた。
太股の付け根に唇をおとした時、ピクンと確かに身体が震えた。
「俺の」
俺は宣言した。
太股の真ん中にキス。
ピクン、やはり天使は震えた。
「俺の」
俺は言う。
天使はもうくすぐったいと、笑っていなかった。
驚いたような顔をしている。
俺の唇がつま先に、ふれた時、天使は声をあげた。
「・・・あっ」
そして自分の声に驚いたようだった。
「・・・僕、これ」
天使は戸惑ったように言う。
俺は歓喜した。
・・・本当に感じ初めているのだ。
薬のせいでも、感じているフリではなく。
俺は反対側の脚も、俺のモノにしていく。
天使は淡い快感を、追い始めていった。
「嘘、本当に気持ちええ」
天使が呟くのが聞こえた。
俺が天使のそれに唇を落とした時には、それは緩やかに勃ちあがっていた。
天使は声をあげた。
「ここも俺の」
俺は宣言した。
「・・・もうええって・・・もう早よ、して」
天使が今では物足りない快感にじれて泣き始める。
天使は感じていた。
勃てたり出したりはコントロール出来る、快楽はセックスでは感じないと言っていた天使が、今は俺のこんな愛撫とも言えないような行為に感じていた。
俺は嬉しかった。
「あかん、全部俺のにしてからや」
俺は言い聞かせる。
俺のだって、痛いくらい勃ってるんや。
俺は最後のそこ。
身体を四つん這いにし、天使のその穴に唇をよせた。
そこはもう、自らヒくついていた。
そのいやらしさに思わず息を飲んだ。
キスをした。
天使焦れったさに身体を震わせた。
「・・・俺の」
俺ももう限界やった。
ホテルに来る前に買ってきたローションをそこにぶちまけた。
指を挿れた。
そこは柔らかかった。
熱かった。
「挿れて・・・もう、ほぐさへんでもええから」
天使が叫んだ。
確かにそこは柔かくていけそうだった。
俺は慌ててコンドームを着けようとする。
「・・・中で出して」
天使が最後は小さい声で言った。
中に出すんはあかんけど、あかんけど、後でお腹いたなったりするって聞いてたけど・・・。
そんなん言われたらあかん。
俺は俺の押し当てて、ゆっくり天使の中に背後から入っていった。
デカすぎる俺のを天使のそこはなんなく飲み込んだ。
あかん、もう出そう。
すごい気持ちいい。
「嘘・・・ホンマに・・・ええ」
天使が信じられないと言ったように喘いだ。
「薬も使ってへんのに・・・」
天使は自分から腰を振った。
「おっきい・・・気持・・いい」
そんなことを云われたら、もう。
俺はそこまでの優しさをかなぐり捨てていた。
「すみません・・・ごめんなさい」
謝った。
もう止まれない。
そこからはもう、動物のように天使をむさぼった。
腰をガンガンぶつけ、声をあげながら天使を味わう。
「嘘・・・いい・・・気持ち・・・ええっ」
天使が譫言みたいに繰り返すから。
「好き。すき」
天使がそんなこと言うから。
俺は泣いていた。
嬉しかった。
この人が本当に俺のところに来てくれた。
今、俺は本当のこの人を抱いている。
「俺だけや。本当のあんたに触れたんは。俺だけや。本当にあんたを抱いたんは」
俺は叫ぶ。
そうやろ?
腰を打ちつけた。
「ああっ!!」
天使が声をあげる。
そこの場所をえぐるように擦ったら、天使の上半身は耐えられないかのように崩れ落ちる。
中が絞りとるように蠢いていた。
天使は本当に乱れてくれていた。
「はあっ・・・あかん・・・イク・・・気持ちえ・・・嘘、ホンマに、気持ちええ・・・」
天使が譫言のようにつぶやく。
ビクンビクン 天使の身体が痙攣した。
天使は出さないで、イっていた。
俺は繋がったまま天使の身体向きを変えた。
やはり顔がみたい。
向かい合う。
肩に脚を担げば、天使の身体は柔らかく、どんな姿勢も受け入れる。
「ホンマの僕に触ったんは・・・あなただけや・・・」
天使が泣いた。
その言葉が胸に来た。
「俺だけや。本当のあんたに触ったんは俺だけや。もう、誰にも触らせん!」
俺は言う。
本気やった。
もう、俺以外の誰にも・・・触らせん。
天使がポロポロ涙を流す。
「僕でええの?ホンマにええの?」
今更何を。
俺は笑う。
「もう、逃がしてあげられへん。もうこうなったら、俺はあなたを諦められへん。・・・あなたが悪いんやで。逃げへんから」
俺は天使の唇にキスして、また天使を貪り始めた。
背中にたてられる爪が、痛みが、本当に感じてくれているのだと思ったなら、心地よさでしかなかった。
そして俺はまた・・・。
天使を気絶するまで責めてしまったのだった。
また、全部中に出してしまったし。
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