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第8章:気がかりな後輩5
それは兵藤がぶつかった力よりも強いもので、その衝撃にぐらっと上半身が思いきりふらついた。
遠慮なくなされた有坂の行為に兵藤はムッとして横を見ると、顔を横に背けながら口を開く。
「ツンデレな兵藤さんに、そんなこと言われたくないんですけど!」
「なっ! 俺はツンデレなんかじゃないで。嬉しいくせに素直になれへん有坂みたいなのを、ツンデレ言うんや」
「違っ! ありがた迷惑っていう言葉がありますよね。兵藤さんのは、まんまこれですから!」
「兵藤さん、有坂くん! いい加減にしないと、他の部署の人の目があるんだから……」
青山がエレベーターホールの前にいる人だかりを指差しで教えて、ふたりのやり合いを制した。それぞれ息を飲んで怒りをやり過ごすと、クスクス笑いだす声がふたりの耳に聞こえてくる。
「私には弟がふたりいるんですけど、おふたりのやり取りを見てると、弟たちのケンカを見てるみたいです」
「なっ、弟たちのケンカ……」
エレベーターを待つ最後尾に並びながら、うんざりした声を出した兵藤に、有坂は「最悪……」なんて小さく呟く。そんなふたりの顔を仰ぎ見た青山は、こっそりため息をついたのだった。
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