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第6章:ミステイク②

***  有坂としてはできるだけ兵藤と接触を避けたいと願っていた次の日、運が悪いというか間が悪いというか、ちょうどお茶当番の日だったので、否が応にも接触することになった。  その関係でいつもより少しだけ早めに家を出て、気落ちしたまま会社に向かう。  給湯室でお茶の準備をしながら顔を付き合わせたときに何を喋ろうか、いろいろシュミレーションをしてみた。  頭の中でシュミレーションしつつ昨日の失態を口にしないように、そしてさせないように会話をしなければと考えてみたのに――  昨日と考えただけで兵藤と交わしたキスをまざまざと思い出し、それまで構築していた内容が吹き飛んでしまう事態に有坂は頭を抱えた。  頬の熱を感じながら、手にしているお茶の入った急須を一旦シンクに置く。乱れた気持ちを抱えたままでは、まともにお茶を注げないと思ったから。 (男のクセに、やけにしっとりとした柔らかい感触だった。あまりの心地よさに、違和感なく自分の唇を押し付けてしまったっけ。これって相当ヤバい。あの人の唇は魔性なのか!? ……って考えてる傍から、何を思い出しているんだよ。忘れなきゃならない失態なのに――)  頭をふるふる振って頭の中にある卑猥なシーンを蹴散らし、兵藤に向き合ったときの会話に集中する。  昨日やってしまった自分の過ちに、絶対にツッコミを入れられないようにしなければ。  勿論、笑いネタにされないようにするのも忘れない!  そんな気合いを入れたためか一日に使う有坂の元気パワーが、この時点でかなり削られてしまったのだった。

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