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02 一瞬

「おう! ミノ、久しぶりだな。どこに隠れてやがった?」  ラグビー選手のような男が大声で駆け寄ってきた。 「筒美会の金庫番を追ってました。残念ながら空振りでしたけどね」  筒美会。  落雷が、脳天からの心臓を抉って足元まで通り抜けた。そのワードは雷だ。ビリビリと電撃が血管を伝い身体が跳ねた。脇に積んであった書類に腕が触れてしまい、ドサドサと派手な音を立てて落下した。音に簑島が振り返り、一瞬目が合ってしまった。顔から火が吹き出る。気づかなかった振りで、身体を低くして書類を拾う。  一瞬だけの簑島の顔。相変わらず美しすぎる。 「成程。そうなると薗田のところが怪しいな」 「薗田の方もガセだ。あいつらは金がない、黙ってても潰れるさ」  声が遠のいていくことにホッとして、顔を上げる。姿勢のいい後ろ姿が見えた。ホワイトボードに群れる同課の者の後ろに立ち、話を聞いている。主任が写真やら地図を指し示しながら説明をしていた。この位置からは遠くて詳細が見えないのが残念だ。主任の説明が終わると簑島が手にしていた書類を渡し、なにやら話始めた。誰もが簑島をみて頷き、意見し、また簑島に頷く。  別の事件に切り替えてもすぐに話の中心になれるとは、噂どおりのキレモノだ。

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