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03 筒美会

 筒美会はここに配属される前の所轄にあった暴力団だ。おかしなことに派閥に属することなく、代々受け継いてきた個人商店みたいなもので、暴対法設立の時期に先代が鬼門に入り、紋を捨てるの譲るの枝分かれするのとすったもんだしているうちに誰が組長なのか、わからなくなったという安っぽいドラマのような話で、セーラー服のお嬢さんが組長だとまで言われたが、実際お嬢さんは出てこず、殲滅するまで組長の正体を知っているものは二人くらいしかいなかったとか。  個人商店とまで言われていたのに、蓋を開けてみると月間億から兆の潤沢な資金を生み出していたという。フロント企業もあったが、実際は組員のそれぞれが、薬物や銃器、芸実作品の違法取引、女を商品に経済を回していたらしい。サカナは地域外のライバル店や企業を利用している人間たちで、行き場を無くしたものが地域内に入ってくる。みかじめ料を払っている店や企業も潤沢になり、組と慣れ合っていたわけだ。  平和な町はやっかまれる。九州の系譜の組織が栃木で密かに暮らしていたが、なにを想ったのか、この個人商店を乗っ取ろうと図った。姑息な嫌がらせと暴行を繰り返してシマを荒らし、ついに戦争かという動きになったとき、警視庁がうちの署を本部に据えた。筒美会構成員が全員集まるということは、ここで組長とやらも顔を出さざるを得ない、内情を知る絶好のチャンスだったのだ。誰もかれもが色めき立っていたのだが、結局知ることはできなかった。  組事務所ごと火事で焼け落ちた。全構成員もその火事で亡くなったことになっている。暴力団という扱いも定かではないためメディア発表も「民家の火事で8名焼死」。非常口のない雑居ビルならまだしも大の大人が全員逃げ遅れるなんてことがあるのだろうか?  組長を失って、全員自決するように火事で? そんなことあるだろうか?   何はともあれ、抗争にならなかったというだけ救われた。火事で組の遺産も所有物もほとんどが失われたので、事後処理もそれほど大変ではなかった。セキュリティも万全だった筒美会には地下倉庫にサーバ室まで管理されていたが、ハードが損傷し取り出せるデータも皆無だった。だが、離れた駐車場に置かれてあった車の中から、いくつかの銃器取引の証拠と保管用DVDのケースが出てきた。  捜査本部はすでに解散していたので、所轄の我々が内容確認のために中を確認する作業に呼ばれた。DVDケースと聞いて嫌な予感はしたが裏AVライブラリだった。いくつもの”作品”をみる羽目になった。最初は被害者を哀れに思いつつも興奮しないこともなかったが、毎日毎日同じような内容のものを見ていると、ついには心も動かなくなり、単純作業に眠気が襲ってくる始末だった。

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