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22 監禁
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願わくば、二度とこういう状態にはなりたくなかった。
新米刑事を教育できなかったのは自分の責任だ。斬新な考え方をするところは買っていたが、やはり机上の論理がうまいものと現場でうまく動けるものは思考回路が異なるのだろう、自らも含めて同等に長けているものはなかなかいない。
権藤を何とか逃がしたものの、すぐに掴まってしまった。倉庫の中の、砂埃を払うと地下への扉があり、投げ落とされ、後ろ手に手錠を掛けられた。一人は先ほどの通行妨害をしていたものと同じくらいの年代だろうか。虚勢を張っているが、いちいち反応が大きい。もう一人は30代前半、組織に関係するものだろう。若い方が手錠をかけ終わると、胸ポケットから警察手帳を取り出した。
「みろよ、警視庁だって。警部だって。捜一じゃないんだー」
「ばかかてめぇ。殺人事件でもなきゃ捜一なんてこねぇよ」
30代の方が、椅子の背を前にして跨ぐとこちらを睨みつけてきた。奪われた銃を握っている。
「むしろ組織対策課ってやつの方が俺らにしたらヤバいってことだ」
「ま、まじっすか、品川さん」
「! こ、コノヤロー、名前言うバカがいるか」
立ち上がって若い奴の腹を蹴る。蹲って謝る男の頭を踏みつけ、さらに腕を蹴る。警察手帳が手元から離れ、暗闇に飛んだ。さんざん蹴りつけたあと、不意に銃口をこちらに向けて近づいてきた。
「やけに冷静だが、刑事さんよ。名前知られたからには生きて帰れねぇことぐらいわかっているよな」
こめかみに銃口を押し付けられる。
「そちらこそ、冷静に考えたほうがいい。組対が根拠もなくこんなところをうろつかないこと。刑事を拉致るより、早めに逃げた方がいいこと」
「う、うるせー」
殴られた。グリップエンドでこめかみを殴られ、メガネが飛んだ。返す手で頬を殴られ脚を蹴られた。無茶苦茶だ。武道や喧嘩にも慣れていないようで、癇癪を起した子供のような暴れ方だった。グリップがさらに左腕に当たって、車でぶつけた箇所が悲鳴を上げた。
ガタン!
天井の扉が開いて、癇癪が止まった。先ほどの通行止め男の足が見えた。
「そいつに手ぇだすな」
笑いながら降りてくる。
「こいつを餌に、押収された銃取り戻せるかもしんねぇ」
…バカなことを考えるものだ。
「ついでに、アニキがそいつ食いたいってさ」
それは困った。
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