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34 光と闇
ベッドに引きずられて移動した。ひとつも電気を点けていなかったため、雷が光らなければなにも見えない。カーテンを閉め切った部屋では余計に闇でしかなかった。
息遣いで徳重が目の前にいることはわかる。
「……電気」
徳重が声を発したことで、顔の位置を把握して左腕を伸ばした。さっさと終わらせてしまえばいい。
「来いよ……」
顔を近づけ誘うように息を吹きかけると、徳重が振りかぶって腕をまわし、腰を引き寄せた。性急に唇を重ねられ、左腕に力を入れると押し倒されて身体がベッドに沈んだ。足を絡めるように徳重の腰を引き寄せて、右手で腹部をまさぐり、危険なポケットのある作業ズボンのジッパーを手探りで下ろす。キツくなったそこはなかなか動かず、内側に左手を入れ下着の上から誇張したそこを抑えるようにジッパーを下ろす。
「ザッシー……」
手負いの獣のような溜息が漏れ、唇を貪られた。両手を下着の下に滑り込ませて、下着ごとズボンを下ろすと、静かになり始めていた雷がふいに大きく震動するように光った。
その機を待っていたように、徳重がすかさず身体を乗り出し、サイドテーブルのライトを点けた。
下半身丸出しの徳重が目の前に居て、慌ててライトに手を伸ばしたが、どこが電源かわからなかった。手探りしている間に、見せつけるように徳重がTシャツを脱ぎ捨て、陽に焼けて健康的に割れた腹を晒す。
「今日は、オマエが膝を割って俺を受け入れるところを見せてやる」
「……!」
全裸になった徳重がまた覆いかぶさるように身体を倒し、首筋に口接けられた。浮き上がった骨の窪みを舌先でなぞられ、爪先まで電気が流れたように反応し、足を滑らせるが、徳重の身体を挟んだ膝は閉じることができなかった。たっぷりと濡れた箇所にまた指を入れられ、入り口を広げるように回された。徳重の左手が膝を掴み、胸にぶつかるほど折り曲げられる。浮き上がった腰が徳重の膝に乗り上げ固定される。真上から見下ろすようにしながら、自分の大きさを受け入れやすくするように慣らしているのだ。
顔を背けてシーツを握ると、
「こっち、見てよ」
囁くような声が聞こえたが、無視して横を向いたまま目を閉じた。
「こういうことも含めて、オマエがどこかで危険な目にあってると思うと気が気じゃない」
グチュグチュと音を立てるそこを扱いているくせに、何言っているんだ?
「危険なとこなら、オマエの代わりに俺が行くから、傷つく前に呼べよ」
「……なら、今すぐ来いよ」
指先が擦れるたびに熱を持つ内側はどんどん熱くなっている。ただ、触れられない箇所が痒い感じはさっきから消えない。触れられている箇所よりももっと奥がジンジンしている。痛みよりも耐え難かった。睨みつけるように顔を上げると、正面から目があった。手を伸ばそうとして果たせなかった。
「……ザ…」
指を抜いたかと思うとそれよりも固く太いものが、入口を圧した。息が詰まって、腰が浮き上がり、広げた手がシーツへ落ちる。それと同時に背中をツーと愉悦が上る。
「……っう」
開いた膝を胸元に押し付けられ、さらに脚を開く形にされた。ナイフで胃袋を刺されたような感覚があるのに、奥のむず痒い箇所には届いていない。徳重が腰を引く動きで、ぐっと内臓を引き出されるような感覚に思わず息をのんだ。
「……ぅ……」
徳重が膝を持つ手を足の付け根までずらしながら、呼吸を計るようにこちらを見た。
「マジで、ずっと、オマエのことばかり……」
涙が零れた。それは生理現象だと思うが、徳重が言葉を止めてぐっとまた押し込んできた。
「ぃつっ……!」
さらにめり込むように入口を広げられ、押し込められていく。痛みに堪えるように、シーツを掴んだ手を伸ばすと、何かに触れた。徳重の膝だ。これが前に進む度、身体を折りたたまれて痛みを受ける、掴んで押し返そうとするが、その力はなかった。膝が動くと腰の位置が前へ上がり、身悶える。
「……ザッシー」
膝を抱え込んだ腕を伸ばして、徳重が頬を撫でた。大きくて固い指先が涙を拭う。「呼ばせてやる」と言われたものの、彼をなんて呼べばいいのだろうか? 声を出そうとしてかなわずにいると、頬に口接けられた。優しくできないなんて嘘をなんで言ったのだろう? 叩くように徳重の顔を手で払うと、最後の力を振り絞った。
「もっと、奥まで来いよ」
かき回してほしい。耐えられないもどかしさと痛みも。優しくなくていい、めちゃくちゃにしてほしい。近眼故に目を細めて睨み返すと、全身が脈打つように揺れた。
「あっ……」
徳重が膝を抱えたまま手をつくと、腰を引いて誇張を抜き、身体ごと沈めるように一気に挿入した。
「……ッ!」
強い力で押し上げられ、舐るように腰が動くと、むず痒い箇所がチリチリと弾けるように痺れを訴える。
「あ……あっ…もっ…、もっと……」
刺激するように声を上げるともう、こちらを見る余裕もない徳重は目をとして、ぐっと感じるままに雄々しく腰を揺らした。息を吸う度強く深く貫かれ、息を吐くタイミングで腰を揺らされ更なる刺激を求める。痛みもむず痒さも熱で溶かされて、一つの感覚になる。
「……すげぇ…」
呟きに熱が上がり、左足で徳重の背中を絡めるように沿わすと、さらにぐっと奥まで侵される感覚を覚え、添えられた逞しい腕にそっと手を伸ばした。閉じられていた目が開き、自分の力で揺らされて感じているこの顔を、トロンとした視線が捉えている。激しく揺すられて身震いすると、ぐっと股関節を開かされて留まった。
それから視線を絡めて、呼吸を合わせるようにゆっくりと動きだし、次第に激しくなる。熱も痛みも、むず痒さも怒りもすべて飲み込んで、身体の奥へ奥へ、さらに奥へと侵入され、ヒュッと吐き出されるのがわかった。じわりと広がる感覚に、今まで感じたことがないほどの快感を覚えたとき、同じように自分も解き放っていた。
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