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中編

 年の割に頭が良すぎた俺と、下手な女の子より可愛い伊吹は周りから浮いていた。結果、二人で行動することが多く、母子家庭で家に一人なことが多かった伊吹は、よく俺の家に来ていた、  ……伊吹はその容姿のせいで、好かれたり贔屓される反面、妙に反発されることも多かった。  変に反応するとますます絡まれるので、笑って流していたのだが――心因性のものなのか眠れなくなって、しばらくすると倒れる。そんな時は俺の部屋で寝かせて、手を握ってやっていた。 「へー君、いてね? 寝るまで、いてね?」 「ああ、いる。大丈夫だ」  そう答える俺に、安心したように笑って伊吹は眠りに落ちていた。再会するまでは子供だからかと思っていたが、今もああして具合が悪そうにしているところを見ると変わっていなさそうだ。 (とは言え、俺は昔と違って無茶苦茶、避けられてるけどな)  背こそ伸びたが、眼鏡は昔からかけている。とは言え、我ながら地味なので入学式で見かけた時、何も言われなかったので最初は忘れられたかと思った。  ……だがつい目がいく俺に対して、伊吹はむしろ目を逸らして決してこちらを見ない。入学して一年。全く一度も目が合わないとなると、意識して避けられているとしか思えない。 (下心がバレたかな)  昔はなついて、頼ってくれるのが嬉しかった。可愛いと思うのも、同じ年だけど弟みたいだと思っているからと思っていた。  ……だけど、学校から帰ったらもう、伊吹はいなくて。引っ越し先も解らず、当時はスマホもなく、手紙一つ出来なかった時に自分の気持ちに気づいた。 (女の子だとは思ってなかったけど、伊吹は俺の初恋だった)  だから、再会出来た時は喜んだが――その下心が駄々洩れなのか、伊吹には避けられている。 (お節介しないて、彼氏もどきに任せればいいんだろうけど……見る度に、調子悪そうだからな)  気持ち悪いと思われているなら、せめて謝りたい。  ……そう思った瞬間、バレーボールが俺の顔面に直撃した。 ※  眼鏡は無事だったが、俺はボールがぶつかった勢いで倒れた。頭を打った可能性を考えて念の為、保健室に行くことになった。 「すみません……」  声をかけて入ったが、養護教諭はいなかった。  まあ、目に見えた怪我はないからとひとまずベッドを借りることにする。授業が終わるまで横になって、吐き気など出ないか様子を見ることにしよう。  ……そう思って、ベッドに近づいてカーテンを開けると。 「えっ?」  そこでは、青白い顔をした伊吹が眠っていた。 (えっ? 何で……いや、具合悪いからか? ってか、先生は?)  焦って辺りを見回したが、誰もいないので返事はない。そんな俺の耳に、不意に伊吹の声が届いた。 「……へー、君。助け、て」 「っ!」  目を閉じたまま、俺のことを呼んで伸ばされた伊吹の手を、俺は咄嗟に握り返した。

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