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第2話
洋が京介と出会ったのは、五歳の時だった。
新年のあいさつとして、分家である大蔵家は瀬名家へと毎年出向いている。
五歳になったのだから、と連れていかれた場所。
そこで、同い年の京介と出会った。
「はじめまして、僕は瀬名京介。きみは?」
「ぼくは、大蔵洋」
「じゃあ、ひろくんだね!あそぼっ!」
にこにこと、元気いっぱいの男の子。それが、京介で、もじもじと人見知りだったのが、洋だった。
あそぼ、と大人がいっぱいいる家ではなく、少し寒いが外で遊ぶことになった。
使用人と一緒に公園に出向いて、たくさん、日が暮れるまで遊んだ。
すっかり打ち解けて、帰るのも嫌だったくらいなのに。また遊ぼうね、と約束したのに。
その日、家に帰れば父はすごく怒っていて居心地が悪かった。
「瀬名の倅と仲良くするとは何事か!」
「え、でも……」
「いいか!あんな性悪女から生まれたあの子供と仲良くすることは許さん!お前は、あの子供より出来なければならない!」
それだけ言うと、父は部屋に引っ込み、洋はショックで泣き出してしまった。
が、母も慰めてはくれない。泣き止みなさい、と言うだけ。
母のお腹には弟も宿っていたので、抱き上げてはくれないことは確かだったが、冷たく見下ろされるとは思ってもみなかった洋はぐずぐずと鼻をならしながら、部屋へと戻ったのだった。
せっかく楽しかった日が、最後の最後で台無しになった。父に怒鳴られた恐怖と、それに付随した悲しみが心を支配する。
新しい友達と思った京介も、仲良くしてはいけないと言われた。引っ込み思案だった洋の初めての友達だったのに。
その次の年から、新年のあいさつに連れて行っては貰えなくなった。幼稚園にいたって、お勉強お勉強の毎日で、生まれた弟と遊ぶことさえ許されない毎日。
そうやって一生懸命勉強したって、世の中には天才と呼ばれる部類の人間が居るのだと小学校を受験し、思い知る。
総合成績一位、瀬名京介の名前を見て、父も母も洋の努力が足りなかったのだと責める。洋だって、総合成績二位で入学したのに。
一位でなければ……、いや、瀬名京介に勝っていなければ、どんなに努力したところで無駄だったと、努力が足りないのだと、言われ、罵られた。
全ての科目に置いて、何かあるたびに比べられ、”どうしてお前はそうなんだ” ”もっと努力をしろ”そう、言われ続けた。弟は、そんなこと言われたこともないのに。
そうして、洋は京介を、弟を恨んだ。京介がいるから、洋は洋としてみてもらえないのだと。弟は、どうして許されるのかと。
学校で、たとえ成績が二位だろうと、京介が一位を取ってしまえば、洋はダメな奴になってしまうから。
会わない間に、京介は口数が少なく、クールと呼ばれるようなそんな性格になっていて驚く。仲のいい友達は数人いるみたいで、遠くから笑ってる姿を見たこともある。
自分はと言えば、瀬名の分家とはいえ、大蔵の名も売れていて、家のつながりを持ちたい輩に群がられてた。取り巻きと言われれば、その通りだけど。
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