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第10話

 ひとしきり笑うと、疲れからか眠ってしまっていたらしい洋は起きて再び拘束されている自分を見て、笑う。 「あっはは、何だよ?瀬名の坊ちゃんはお盛んな時期なのか?」  くはっ、と笑えば黙れ、と首を絞められる。  だが、京介の目が、怒りが自分に向いていると思うとゾクゾクする。  ここで気を失うのはもったいないとさえ思ってしまう。 「お前のせいだろうが」  反論しようとしたが、首の圧力が強まって息をするだけで精いっぱいだ。  首を絞めるのも気が済んだのか、気を失う寸前で解放される。ゴホゴホとせき込み、空気を吸い込んだ。 「殺せるもんなら殺してやりたいけどな」  そうして伸ばされてきた手。  その手に、体が跳ねる。洋の体は、覚えていた。それはそうだ、昨日の今日だから。  状況が特殊でも、とても感じて気を失ったことを覚えている。  はぁ、と吐き出した息が熱い。また、京介が触れてくるその興奮が抑えられないようだ。  自分はそんな欲求を持っていたのだろうか?と疑問に思うが、拒否をしようと何て思わない。  京介が、自分を見ていることが大切なんだ。  ……どこで、そんな思考になったのだろう?と洋はふと考えたが、京介の手に翻弄されて考え事も続かない。  京介は、嫌いな洋に屈辱を与えるとともに、洋に何も考えさせたくないのだろう。  だが、京介の目が少しだけ悲し気に歪められたのが、気に入らない。  洋は、京介に同情してほしいわけでもない。自分を見て欲しいだけ。  でも……何で見て欲しいんだっけ?もう、何故見て欲しいのか覚えていない……どうして、見て欲しいのか……。 「考え事か?余裕そうだな?」 「ちが、アァッ!!」  京介に中をゴリゴリと突かれ、ぎゅうぎゅうと中を締め付けると京介の陰茎を意識してしまう。  考えるどころではなくなってしまう。 「やぁ……っ、ぅあ、あぁ!」 「お前は何も考えずに、ただ感じてろ」  それが、人のためだと京介は言う。まぁ、そうだろうな、と洋も同意する。  京介以外に興味がなく、誰を傷つけることも厭わない洋は何も考えていない方が世のため人のためだろう。  だが、誰を傷つけることをも厭わない洋は、その身すらもどうでも良いのだという事をまだ誰も知らない。  京介すらも。 「アッ、ひぅっ」  乳首を摘ままれ、声が出る。昨日弄られたそこは、眠り、休息をとったことにより少しは落ち着いたかと思えばそうではない。  弄られ、摘ままれると自然に穴を締め付けることになってしまう。その中を無理やり押し入るように京介が割り開くから何をしても酷く感じてしまう。  薬が残っているかと思うほど、感じるが、昨日のように我を失う快楽ではない。  発情期ではないセックス。まぁ、アルファに発情期などないのだけれど。 「落ちろ……」  そうして、最奥まで入ってきた京介に、熱い、アルファならではの精をぶつけられ、イッてる最中に意識を落とした。  目が覚めてみれば、また京介はいなくて、その代わりに赤塚がいた。 「またおまえかよ」  声は、昨日ほどひどくはなかった。  起こす体も、それほど辛くはない。 「えぇ。私です、何か?」  はっ、と鼻で笑う洋に気にするべくもなく、赤塚は水の入ったコップを手渡した。  それを一気に煽ると、少しすっきりする。これが、これからの日常になるのかと思うと少し辟易するけれど。 「さて、お風呂に入りますか?それともまた眠ります?」 「風呂に入る……」  流石に、京介が綺麗にしてくれているとはいえ、風呂に、せめてシャワーを浴びたかった。  では、と赤塚が案内するのは備え付けの扉。そちらを開けると、シャワールームが広がっている。  赤塚だろうと、洋は興味がなく、ベッドから出ると全裸でそちらまで歩いていく。  そもそもこの部屋には、洋の着れるようなものはない。空調は効いているし何の問題もない。  それについて、赤塚も何も言わないが、シャワールームに入るときに後ろに視線が刺さった。

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