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第3話

 医務室らしき場所はすぐ見つかった。  カーテンレールがあったから医務室だと思われた。  入り口に洗面所があったし、多分ここだろう。  ベッドも何もなく、もちろんレントゲン写真など落ちていなくて。  天井が破れて、一階からの光が差し込んできていた。  それだけの・・・部屋だった。  皆、なんかがっかりした。  なんかあるのは嫌だったけれど、何かあっても欲しかったからだ。  「帰る、か」   誰かが言って、皆賛同した。  しかし、その時誰かが言った。  「おい、なんやこれ」  僕らはそれを見た。  壁が劣化していたから、崩れかけていたからそれの存在はわかった。  医務室の壁の、壁紙がはがれ、劣化したコンクリートが崩れたそこに、ドアが見えた。  それは、この壁の向こうに秘密の部屋があることを意味していた。  「これって、明らかにこのドアを壁に塗り込めて隠してるんやんな」   誰かが言った。  そうだろう、と僕も思った。  急に僕達は盛り上がった。  古いホテルに隠された部屋を発見したのだ。  コンクリートは多分ちゃんと作られたものではないのだろう。  触ればぼろぼろと崩れてきた。  「これ、ドア開けたくならへん?」   誰かが言った。  僕らのテンションはとまらない。  誰かが上から鉄パイプをもってこいきた。  皆で壁を交替でど突いて、ぼろぼろのコンクリートを壁から落としていく。  僕らには体力とパワーがある。       ドアを塗り固めていたコンクリートを取ることに成功した。  でも、当然ドアには鍵がかかっていた。    「ほんなら、みんなの力を合わせるで!」  誰かが言った。  もう僕らを止められるものなどいない。  木のドアなんかぶち破れってことた。  全員で鉄パイプをつかみ、全力でドアを突いた。   湿気と年月で劣化したドアは僕達の敵ではなく、ベリベリと音を立てて裂けた。  僕らは歓声をあげた。  「ほな、入ろっか」   誰かが言った。  でも、誰も一番には入りたくない。  じゃんけんで負けて僕が行くことになった。    なんのために、わざわざドアをコンクリートで固めて、その上に壁紙を貼って、ここに部屋があることを隠したのか。  僕は少し怖かったけれど、興味深々だった。  「・・・これって・・・」  僕は絶句した。  それは檻だった。  その部屋は6畳ほどの広さで・・・、そのほとんどをその檻が占めていた。  ボロボロに錆び付いた、檻。  檻の中には何いなかった。  ただ、置いてあった古びた首輪が、鎖が、何かをそこに繋いでいたことをしめしていた。  今は開いた檻の入口付近にころがっているものに僕は恐怖した。  それは、人間の使う茶碗やお箸やスプーンだったからだ。  何をここに?  首輪、人間用の食器。  そして怯えた。  檻の中にあったのは、何冊かの本だったからだ。  この檻にいたのは・・・。  人間だったのだ。    おそらく、人間が首輪に繋がれ、ここに閉じ込められていたのだ。    何のために。  誰を。  このホテルは一体・・・。    僕は恐怖した。  

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