12 / 20

第12話

 「ごめん・・・お前は男に興味なんかなかったのに・・・ごめん。でも、ちゃんと女の子と付き合ったら多分、こんなん忘れる・・・」  謝り続けるソイツを胸に抱いていた。  震えて泣いてる。  可愛いはずなのに、腹が立つ。  「もう、黙って・・・」  僕は言う。  そんなこと聞きたくない。  でも優しく髪は撫でる。  好かれてないのにするのは辛なる、か。  アイツの言葉が響く。  辛い。  気持ちが伝わらないのは・・・確かに辛い。  でも、僕はアイツを抱きしめ続けた。  優しく抱きしめたら、気持ちが伝わるんじゃないかって思って。  アイツは目をとじていた。  閉じたまぶたから涙が零れていく。  可愛い。  腹立たしい。  辛い。  可愛い。  僕の気持ちはぐちゃぐちゃになっていた。  夕暮れが近づき、アイツはサボテンを食べた。   「量が難しいんや」   アイツは言った。  「下手すりゃ、意識不明になるし、単なる幻覚だけを見ることになる」  そんなものを食べていいのかと僕は心配した。  「何回も試しとる大丈夫や」  アイツは笑った。  そして、ふと、そっと僕の唇に優しく唇を重ねた。  一瞬だったから呆気にとられた。  そして、ソイツからキスをしてきたのが初めてだったことに気付く。  「ごめん、な。これで最後やから」   アイツはふわっと笑った。  「お前・・・僕とするの嫌や言うてたところやん」  僕は愚痴る。  「ん、だから最後や」  アイツの笑顔をはじめてみた。  泣き顔が一番可愛い思てた。  でも、なんやの、それ。  皮肉な笑顔じゃなくて、ふわりと笑った笑顔の可愛さは・・・殺されるかと思った。  可愛い過ぎる。  泣かせたい思ってたけど、笑わせたい。  いや、でも泣かせたい・・・。  僕は混乱する。  でも、それは次第にアイツの息が荒くなるまでで、アイツは真っ青になっていく。  「おい!」    僕はアイツを揺さぶる。  「大丈夫や。ええ感じや。お前も視るんや。意識を集中しろ、ソレがくる。ソレがどういう風に来るのか・・・俺には分からん」  アイツは虚ろな目をして宙をみていた。  僕も夕闇がせまってくるのを感じる。  闇がぼんやりと部屋の隅に溜まっていく。  境目なのだとアイツに説明された。  この世界とあのあの世界の境目。  境目がソレをこの世界でソレを現実化させる。  闇と光が混雑するこの時間こそ・・・。  逢う魔が時なのだ。  ばん  ばん  ばん  突然音が響き渡った。  あちこちの部屋のドアが開けられる音だ。  アレが現れたのだ。    そして僕を探しているのだ。  「あぬこののほほふそよなかのよゆらよりにゆ」  声が響く。   それは人間の言葉ではなかった。  「やなゆこゆむなやきいやにをら」  それは吠えた。    姿はまだ見えない。  でも僕は全身に鳥肌が立っていた。    「のんらわまたかやわにさら!!!!!!」  それは男の声でも女の声でもなかった。   複数の声が重なるような声だった。  夕闇が濃くなる広間の隅からそれは這いずるようにあらわれた。    「見えてるか」  僕はアイツに言った。  「見えてへんかったら良かった思てるわ」  アイツが答えた。     ソレが吠えた。  「えこよわふそらまかこゆたははわやわ、!!!!」  そう、見えなければ良かった。

ともだちにシェアしよう!