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第2話

 「可愛い・・・キスだけでこんなにこわがっちゃって」  頬を挟み込まれ、囁かれた。  なんだその顔。  誰だお前。  彼はおもう。  幼なじみは、顔が崩れてしまっている。   ふにゃふにゃに笑っているのだ。  硬く整った顔はどこにもない。  そんなに嬉しそうに言われたら、怖くて腹立たしいのを許してしまいたくなるけど酷い。    口の中を舌で掻き回されることも、舌を絡められ吸われることも、唾液を飲まされることも、ただただ怖い。    慣れたようなキスにふと思う。    「キス・・・おまえは誰かとしてたの?」  彼は聞く。    幼なじみが一瞬固まる。  「・・・もう、お前だけ。お前が許してくれたからお前だけ」  何か答えにならない答えを言われ、またキスが始まる。  もう聞かれないようにするかのように。    熱い舌に逆らう方法さえしらない。  甘く舌を咬まれて、思わず吐息がこぼれた。    「父さんは来月まで帰ってこない。それに三連休だしね。ゆっくり慣らしてあげる。帰さない。」  優しく囁かれた。  長く突き放された後だから泊まれることは嬉しかった。   ただ、昔からそうだったように仲良く過ごしたかった。  「急がない。大丈夫、ゆっくり慣らしてあげる。3日間かけて。お前が大事なんだ」    幼なじみは彼を抱きしめた。  強く、でも、壊さないように。    「誰ともしたことがないこと、僕としようね」  幼なじみは彼の唇を舐めて、囁く。    「全部教えてあげる。僕以外とは絶対したらだめだからね」  また、唇が重なる。  舌がチロチロと舐められる。  誘われているのだとわかった。  彼からもしろと。  真っ赤になる。  そんなこと出来るはずがない。  首を振って逃げたい。    でも、ガッツリ頭を掴まれている。  彼が自分からするまで終わらないことはわかった。   幼なじみは一度決めたらそうする。  恥ずかしさに泣きながら、自分の舌を下手くそに幼なじみの舌に重ねた。  幼なじみが震えた。  呻き声さえもらす。    結局幼なじみに貪られるようになるキスは、吐息が出るほどそれでも甘く、怖かった。  「僕の。僕のだ。僕だけの」  キスの合間に繰り返し、囁かれ、怖くてたまらない。  でも、止めるわけにはいかない。  失いたくなかったから。  「覚えて、僕とするキスを覚えて」  教え込まされる。    舌の絡め方、唾液の飲み方、舌を吸われて吐息をもらすことや、何故か下半身に熱が溜まることも。  「服を脱がすから。全部見せてね」  言われる言葉が恐ろしい。  「嫌だ」  泣いて言う。  「いいよ・・・でもいいの?」  見つめられる。  茶色の目は視線を逃がすことを許さない。  嫌だと言えば、この部屋に二度と入れてもらえなくなり、二度と隣りにはいてくれないことがわかった。  「言って」  言われた。  流されたのではなく、幼なじみの意志だけではなく、のぞんでしていることを刻みつけるためだ。  「脱がせて・・・いい」  恥ずかしくて泣いた。  性的なものを恐れていた。  自分の身体さえ嫌いだ  同性の裸もまともに見たことはない。    なのに、他人に、幼なじみに見せるなんて。    幼なじみは嬉しそうに、でもゆっくり、優しく、服を脱がしていく。      Tシャツを抜がされ、露わになった胸に思わずといったようにキスを落とされ、思わず身体をふるわせた。  人の唇がそんなところに触れる感触なんて・・・怖い。  「ごめんね。思わず、ね。ゆっくりするから、怖がらないで」  優しく囁かれた。  必要以上に触れぬように、優しくゆっくりと全ての衣類は脱がされた。  視線が身体を這い回るのが怖くて泣いた。   でも、幼なじみは容赦なかった。  脚を押し開かれ、性器までじっくり眺められ、脚を持ち上げられ、尻をおし広げられ、穴まで確認された。    恥ずかしさに泣きじゃくる。  「泣くほど恥ずかしい?」  穴を顔を近づけて眺めながら幼なじみが言った。  息がかかって、余計に泣けた。  「でも見せてくれるんだね。・・・僕のために」  顔を上げて笑う。  なんでそんなに嬉しそうなのか、わからないわからない。  「うっ・・・うっ・・・」  もう泣き続けるしかない。  耐えるしかないのだ。  全て見られた。  身体をひっくり返し背中から耳の裏まで見られた。    それでも最低限しかその優しい指は触らない。  だからよけいにその視線がつらかった。    恥ずかしい。  嫌。  嫌。    性的なものを避け続けていた彼には、性的な視線も、見られている自分にも堪えられなかった。  「勃起してるね」  真顔で言われ、自分の目でも確かめる。  風呂やトイレで最小限にしかさわったことがなかったそこは、確かに屹立していた。  泣く。  泣く。  嫌だこんなの嫌だ。  自慰すらしたことがなかったのに。  「大丈夫。大丈夫だから」   なだめるように言われ、涙をなめとられた。  その舌の感触にまた震えてしまい、また泣く。  「ああ、もう、可愛いなぁ」  抱きしめられて、身体を硬くする。  それでもまた唇を塞がれたなら、教えられたように舌を絡ませ、唾液をのむ。  「たまんない」  幼なじみは低く唸った。  「そんなに僕が好きなの、こんなことまでさせてくれるくらいに」   幼なじみはもう叫ぶように言う。  返事がなくてもかまわないだろう。  そう、その通りだからだ  こんなことをさせていることこそが、好きだってことの証明でしかない。  幼なじみを引き止めるためなら、何でもすると決めたのだ。  「大事にする」  抱きしめられた。   してくれるだろう。   今までだってそうだったのだから。  ただこれからはセックスもしなければならなくなっただけだ。    キス。  そして視姦。    次は何をされるのか。  彼は怯えながら、どうしてこうなったのかを考えていた。

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