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第4話
「面白いな、これ」
テレビを見ていて、傍らに話しかける。
そこには誰もいない。
彼が高校生になってから会社で出した企画が当たって忙しくなった母は、子供も大きくなったことだし、と仕事にのめりこんで最近は夜遅い。
去年から二年の予定で外国で働く父親は当然いない。
でも、今までは幼なじみと二人だったから、別に淋しいとは思わなかったのに。
ふたりでご飯を作って、二人で自分達の洗濯して、課題をして・・・。
交代で風呂にはいって。
寝る時だけ幼なじみは家に帰っていく。
そんな毎日だったのに。
いない。
いないなんて。
幼なじみはもう、側にいてくれない。
話かけたなら応えてくれる。
他の人と同じように。
でも、側にいてくれない。
すっ、と離れてしまう。
そして彼は気づいた。
幼なじみに側にいて欲しがっているのは自分だけではないことに。
彼から離れた幼なじみは、沢山の人に囲まれていた。
男子も女子も、幼なじみと話したがっていた。
幼なじみと一緒にいたがっていた。
あまりにも当たり前だったから気付かなかった。
優しくて、何でも出来て、カッコイイ。
誰だって、幼なじみと仲良くなりたかったに決まってる。
自分と一緒にいてくれたのは、自分が幼い頃から一緒にいた、それだけの理由だった。
別に幼なじみには自分と一緒にいる必要などないのだ。
それがわかる。
神経質、いや、病的な潔癖の彼といるより、幼なじみは普通の年頃の少年少女達と一緒にいる方が楽しいのかもしれない。
そんなことさえ思いつかなかった自分を恥じた。
自分はとても楽しかったから、相手も楽しいのだと思い込んでいたのだ。
真っ白になる。
自分は他の誰にも興味がなく、むしろ他人には嫌悪さえ感じていた。
自分の母親でさえ、たまに触れられそうになると許否感をもってしまっていた。
幼なじみだけは違った。
決して触ろうとはしてこなかったけど、触られても嫌悪は感じないことはわかってた。
勝手に自分の一部のように思っていたからだ。
どうしてそんなことを思ってたんだろう。
どうして。
怖くなった。
声もかけれなくなった。
一週間以上が過ぎた。
近づくことすら出来ない。
寂しいなんて感情知らなかったのに、今はぽっかり穴があいたようだ。
沢山の人に囲まれて笑っている幼なじみを遠くから見る。
幸せそうだ。
オレが邪魔だった?
オレといるとつまらなかった?
オレが。
オレが嫌いだった?
泣けてきた。
必死でこらえた。
毎晩泣いた。
寂しくて寂しくてたまらなかった。
でも。
でも、その方が幼なじみが楽しいなら仕方ないと思った。
自分が邪魔だったのなら。
今楽しいなら。
今幸せなら。
ごめん。
ずっとごめん。
そう思った。
笑い声が聞こえた。
それは以前は自分の隣りであったものだ。
二人の笑い声が重なることはもうない。
それが悲しい。
交わす視線。
弾ける笑顔。
自分だけのものだと、何の根拠もなく思っていた。
辛くて。
辛くて。
教室から逃げ出した。
今逃げても同じクラスだから何にもならないのに。
教室から走り出た。
気が付けば家だった。
家に帰ったところで。
向かいの家にすんでいるのだ。
母親が呼べば家に来るだろう。
母親は幼なじみをかわいがっているのだから。
でも。 でも。
もう今まで通りじゃない。
家に来てくれても、もう今まで通りじゃない。
ベッドに潜り込み泣いた。
どうすればいいのかもわからなかった。
突然世界を半分奪われたのだ。
残った世界で一人途方にくれるしかなかった
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