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第5話

 いつのまにか泣き疲れて寝ていた。    目を開けたら幼なじみかベッドの側に椅子をもってきて座っていた。    夢かと思った。  「大丈夫?突然飛び出したから心配したよ。先生が様子見て来いって。気分がわるくなって寝てたみたいって連絡しておいた」  鞄を持ってきてくれたらしい。  家族同然なのだ、鍵も持っている。  「大丈夫」   それだけ言って布団に潜り込んだ。  先生に言われたからじゃないのは知ってる。  優しいから。  優しいから、もう嫌になってしまったヤツでも心配してくれる。  布団の中で泣く。  自分だからじゃない。  「ねぇ、泣いてるの?」  優しく聞かれる。    分かっているなら放っておいて欲しい。  もう側にいないなら捨ておいて欲しい。  優しくしないで。  「一緒にいられないのはね、お前のせいじゃない。お前は何も悪くない」  幼なじみは優しい声で言った。  「僕のせい。だから、自分を責めたりしないで。僕はお前が好きだよ」  淡々と言われた。  嘘つきと思った。  ひどいと思った。  なら、なんで離れる?  沢山の人達の中で笑ってた。  もうオレなんていなかったみたいに。  「かまうな!!どうでもいい!!」  叫んだ。  布団をかぶり姿は見なかった。  見たら、それでもすがりついてしまうかもしれない。  そんなの嫌だ。  オレにはお前だけなのに、お前は誰からもすかれてる。  他の誰かと同じにしたいなら、オレにもう近づかないで。  ため息がした。  「理由があるんだ」  幼なじみはどこまでも優しく冷静な声で言った。  どんな理由が!!  オレを嫌いになっただけだろう!!  確かにそんな理由も聞きたくないけど、嘘はもっと嫌だ。    「出ていけ!!」  彼は叫んだ。  「・・・そう」  幼なじみはまたため息をついて言った。  椅子が動く音がして、幼なじみが立ち上がったのがわかった。  出て行く。  もう戻ってこない。  悲しい。  胸が痛い。  嫌だ。  唇を噛みしめて泣く。  耐えないと。   一人じめなんてもう出来ない。  幼なじみは沢山の人達に囲まれて笑っているのが似合ってる。  オレだけのじゃない。    悲しい。  悲しい。  耐えなきゃいけないのに耐えられないのが悲しい。  嗚咽をこらえられなかった。  我慢しなきゃいけないのに、声を漏らしてしまった。     優しい幼なじみは苦しむだろう。  ごめん。  ごめん。  ドアが開く音がする。  手を血が出るほど噛んだ。  行かないでと、叫ばないように。  行ってしまう。  行ってしまう。  そして分かった。  当たり前だからわからなかった。  それが当然だからわからなかった。    幼なじみが好きだった。  ずっとずっと。    「・・・もし理由が聞きたかったら、僕の部屋にきて」  ドアが閉じる前に幼なじみは言った。  理由?  そんなの。  そんなの。  聞きたくなんかない。  ドアが閉まると同時に声をあげて泣いた。  叫びながら泣いた。  今ここでこの胸が裂けてしまえばいい。  そう思った。  

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