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第14話
なのに。
なのに。
音を上げると思った。
一人になれば、幼なじみしかいないことを自覚して、「好き、行かないで」と言ってくると。
好きなことを自覚させて・・・逃げないようにさせて、抱くつもりだったのに。
なのに。
いつまでも言ってこない。
泣きそうな目はたまらなかった。確かに。
でも、言って来ないことには焦った。
部屋を訪れ、ドアを開けて出て行く時に、いくらなんでも言うだろうと思ったのに。
とうとう待ちきれなくて、自分から部屋に呼び出すはめになったのに。
「嫌いって言って。諦めるから」
ときた。
彼を閉じ込めてしまうために長年頑張ってきたのに、彼ときたら、こちらを開放しようとした。
彼だけが独占しないように、幼なじみが自由になるように。
そんなに泣いて苦しいくせに。
痛みより、幼なじみの自由の方が大切だからと。
そして、今も、苦手なセックスで泣かされても逃げ出したりしない。
全部、僕のため。
全部全部全部、僕のため。
こんな幸福感知らない。
閉じ込めることしか知らない酷い男のために、ここまでしてくれるのだ。
僕が彼を愛するよりも、彼は僕を愛している。
こんな幸福あるだろうか。
幼なじみは幸せを噛み締める。
ここから先、幼なじみは幸せだ。
誰よりも幸せだ。
綺麗な愛する鳥を、鳥籠の中に閉じ込めた。
でも、思った。
鳥には自分の意志でそこにいてもらわなければならない。
僕はお前を閉じ込める。
でも、その入り口は開いている。
いつでもお前は逃げ出せる鳥籠だ。
お前が僕を本当に愛してくれたから、僕はお前が逃げたなら諦める。
だから僕はお前が逃げたいと思わないように努力する。
お前をここに優しく閉じこめて、その入り口に気付かせない。
「休みはまだ2日あるね」
明日からのことを思って微笑む。
逃げられることなど思いもつかない程に愛してあげる。
快楽におぼれることを教えてあげる。
幼なじみは微笑んだ。
時間なら沢山ある。
この鳥を愛している。
閉じこめてしまうほどに。
逃げ出したなら許してしまうほどに。
お前が逃げ出したいのなら、僕はお前を追いかけない。
END
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