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ピュア第5話
嫌だ!!
舌を噛んでやろうとしたのにオレの舌と混じり合って溶け合って・・・なんか境目がわからない。
オレは怖くなった。
コイツ何なの?
オレをどうするの?
舌を溶かされていく。
口の中の熱さに震える。
息が出来ない苦しさ。
甘く唇が吸われる。
何度も角度を変えて唇を柔らかく擦られ、舌を舐められ、絡められ、噛まれる。
蕩ける。
舌じゃないとこを舐められてるみたいだ。
嫌だ、気持ちいい、嫌だ、嫌だ。
何で、股間が熱くなってんの。
そこを舐められてるみたいに。
嫌だ!!
嫌だ!!
オレはもう自分の舌ごとでいいと思った。
どちらの舌なのかわからないくらい溶けきった熱いそこを噛んだ。
思い切り。
「ぐぅっ」
見事にオレは自分の舌を噛んでいた。
驚いたようにアイツは顔を離した。
そら、そうだ。
口の中が血で溢れたらな。
だけど、次の瞬間、鬼のような顔でオレにのしかかってきた。
ふざけんな、レイプする気かよ、馬鹿にすんな、お前のモン噛み切ってやる!!
アイツは身構えているオレに、身構えていつでも反撃しようとしているはずなのに、ひょいと顔に触れてきた。
簡単に。
見えるのによけられないのだ。
「大丈夫か・・・見せてみろ。ほら」
めちゃくちゃ簡単に口を開けさせられた。
顎の関節を指で押すだけで簡単に口は開かされ、閉じることは許されなくなった。
何、コイツ、何でこんなことできんの。
どこの武道の達人だよ。
「ああ、大丈夫だ。ちょっと深いけど、これくらいなら・・・血は止まる。2、3日は喋りにくくなるけどな」
なんか言ってる。
「・・・悪かった。怖がらせて・・・ごめん。あんたが目なんか閉じるから。つい、キスを。あんたも悪いんだ」
指が離れ、口を閉じることが出来た。
なんか、また抱きしめられてるんだけど、何なのこれ?
それより、お前は自分の前で目を綴じた人間に自動的にキスするのか!!
そんなシステムは知らん!!
優しくでもしっかり抱き留められていて、何故だか動けなない胸の中からアイツを睨みつけた。
アイツはまた唇を歪めた。
笑おうとしているらしい。
「話がしたかっただけなんだ」
宥められるように低く囁かれる。
馬鹿にすんな。
オレは歯を剥き睨みつける。
「猫みたいだな。可愛い」
何言ってんだコイツ。
馬鹿にしやがって。
「怖がらないでくれ。嫌わないでくれ」
その声の響きの真摯さに、オレはソイツにむかって剥いていた牙をおさめてしまった。
「もう、しない」
そう言われた言葉を何故か信じてしまった。
子供をあやすように背中を撫でられた。
「オレは・・・話がしたかっただけなんだ」
頬をすりよせられた。
滑らかな肌が頬をこする。
少年の肌だ。
子供なのだ。
身動きもとれないまま、好きにされたばかりなのに、そんなことに安心する。
いや、安心出来るはずがないけど。
「怖がらせたかったわけじゃないんだ・・・ただ、あんたをこのまま帰したくなかったんだ・・・ちょっと話したかっただけなんだ・・・二人だけで」
表情はきっとないだろう。
でも、その声は重低音でありながら、少年の話し方で、感情がこもっていて・・・オレは何故だか安心した。
いや、安心したらダメだろう。
目を吊り上げて睨む
「あんた・・・やっぱり猫みたいだな」
アイツは笑った。
声を立てて。
オレは驚いた。
ちゃんと笑ったアイツは、少年に見えた。
柔らかな笑顔だった。
笑えるんだ。
納得する。
愛想笑いが全く出来ないだけだ。
目を見開いたオレの表情に、アイツも目を丸くした。
そして、また唇を歪めた。
そう、なんとか笑ってみせようとしてくれていたわけだな。
どうやら、どういうわけかわからないけれど、コイツオレに友好的であることをみせようとしていたことは分かった。
「話ってなんだ」
とりあえず聞いてみることにした。
座ったまま190センチある少年にに抱きしめられてする話が何なのかわからなかったが、聞いてみた。
アイツは真っ黒な目をオレにむけた。
また無表情な沈黙が満ちる。
「・・・・・・名前教えて」
アイツは言った。
オレは大きく息を吸った。
そしてにっこり笑い、思い切りソイツの横っ面を殴りつけた。
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