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ピュア 第10 話

 肘は確実にアイツのこめかみをえぐったはず、だった。  アイツの腕がオレの肘が落ちる前に肘の動きを止めていた。  オレより速く動いたのだコイツ。  嘘だろ。  「今日はもうあんたオレの奥歯まで折ってるんだ。勘弁してくれ。あんたに潰されかけたチンポもまだ痛むしな・・・オレをここまでの目に合わせたのはあんただけだぞ」  アイツはそっと、オレの肘を離す。  圧倒的な実力差。  アイツに当たった攻撃はアイツがオレの攻撃をあえて受けていただけだったことを思い知る。  「殴られてやりたいけど、そうそう殴られてたら話が進まない。頼むから冷静に話を聞いてくれ」  頭に蛆を飼ってるヤツが自分がマトモみたいなことを言い始めた。  「あんたじゃなきゃダメなんだ。あんたがいいんだ。・・・オレをぶん殴れるあんたがいいんだ。オレに向かって怒鳴れるあんたがいいんだ」  アイツはオレを抱きしめようとし、でも、なんとかそれを止めて両肩に手を置くだけに留めた。  嫌がることはしない、を守ろうとしているらしい。      「オレを好きになってくれ。オレ、努力するから。あんたがオレを好きになってくれるように努力するから」  跪き、乞われる。  何これ。  何なのこれ。  アイツは床に正座した。  そして床に額をこすりつけた。  「オレと付き合って下さい」  アイツは床に額をつけたまま言った。  無理。  無理。  お母さんの猫に似てるとかいいとか、怒鳴るからいいとか、殴るからいいとか、脳の中の蛆の戯言以前に、いくら頼まれても、オレは男子高校生はダメ。  倫理的とかじゃなくて、無理。  だってお前男だろ。    「男だから無理ってのは無しだそ。あんたがオレで気持ち良くなれるのはもう知ってるんだからな。挿れられんのが怖いのは分かる。でも大丈夫だ。時間かけてやる。ゆっくり何日もかけて広げてやる。オレのデカいのぶち込む時にはそれが欲しくて泣くくらいにまでしてからにする。いきなり挿れれるような粗末なもんは持ってねぇしな」  アイツが床で土下座してるわりにはえらそうに言ってくる。  そら、粗末なもんを持ってないだろうなってことは分かるよ、その体格に見合うモンなら凶器だろ、てかそういう問題じゃない。       確かにお前で気持ち良くなった事実はある。  だけど、だけど。  「あんた、女としたこともないくせに、オレとあんだけ出来たんだ。大丈夫だ。女より、オレはいいぞ。オレとあんたの相性は間違いないしな。それはあんたももう知ってる。全身舐めてやる。口でしてやる。後ろの穴もとことん気持ち良さを教えてやる」  アイツはペロリと唇をなめた。    オレは思わず喉が鳴った。  オレは知ってる。  この舌の気持ち良さを。  「誰もいないなら・・・オレを」  アイツがオレに約束通り触れないようにしながら、耳に声を流し込む。  低音に脳が痺れる。  確かにいないよ。    誰もいないよ。    でも、何でお前なの?  可愛い女の子にそう言って欲しかったのに、なんでお前なの?  ゴリラじゃん。  化け物じゃん。  大型獣じゃん。  「せめて試してみてくれ。ただダメだと言われても諦められない」   痛切な声はオレの脳に直接感情を届けてくる。  「諦めさせてくれ、なぜダメなのかを納得させてくれ」  アイツの重低音がオレの脳を狂わせる。  「高校生はダメだ!!」  オレは真っ当な理由を述べる。  「18になるまでにあんたに相手ができたら嫌だ!!セックスしなければいいだろ、卒業まで!!」  アイツが食い下がる。  オレは思った。  高校生の女の子とこういう会話がしたかったです、と。  「とにかく、いちど付き合ってくれ。それでダメなら諦めるから」  アイツが言う。  顔が見えないからヤバい。  声だけはコイツ表情豊かなのだ。  

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