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告白までの距離 第2話
彼も体育は苦手。
めちゃくちゃわかる。
からかわれてはずかしそうにわらう。
気にするな。
そんなモノ、原始人がすることだ。
・・・でも、オレよりは得意。
一人でいることを好むけど、オレみたいに誰ともかかわらないわけじゃない。
たまにはクラスメイトとも話してる。
オレ以外とは。
まあ、オレが誰ともかかわらないのだけど。
オレはこっそり見続けた。
頭が小さくて手足が長いから、背が高いように見られがちだけど、実はそれほど高くない身長。
オレの目測では170には届かない。
167センチだな。
「痩せてていいね」
とクラスのブスどもに言われたら困ったように笑う。
黙れブスども。
彼に近づくな。
痩せてることにコンプレックスがあるんだよね。
わかる。
わかる。
オレも背ばかり180もあるけど、ガリガリだからわかるぞ。
オレの人生は読書より彼を見ることに重きが変わった。
見ないでどうする。
見ることこそが全て。
全てを目に焼き付ける。
彼は無口であまり話さないけれど、話す言葉は全て耳に焼きつける。
そして、夜になったら全ての映像と音声を利用して、彼の事を思ってオナニーするんだ。
その為だけに見る。
実際の彼には話さえ出来ないから・・・想像の彼を出来るだけ本人に近づけることこそがオレの執念になっていた。
どうせ、卒業したら二度と見れなくなる。
なら今見ておきたい。
話すことも出来ない、触れることもできない、いつか見ることさえ出来なくなるのなら・・・。
心の中に彼を留めておきたかった。
恥ずかしそうに笑う内気な笑顔。
伏せ目がちで、いつも困ったようにしている姿。
本を読んでいる時の幸せそうな顔。
白い喉、細い腕。
細い背中。
小さな尻。
見えないところは想像で補う。
細部に渡って妄想した。
物語の中で、彼はオレ腕の中で、その上品で整った顔を快楽に歪め、オレに貫かれながらオレがもっと欲しいと泣き叫ぶのだ。
・・・セックスする想像の方が、付き合ってる想像よりも簡単だった。
セックスしないで二人でいる想像は・・・何も思いつかない。
話しかける言葉さえ。
親しく話す幻想さえ描けない。
動物のような性欲の方がわかりやすかった。
毎日眺める。
そして、自分の中の彼を本物に近づけていく。
そう、想像の彼を実物に近づけるというのが、オレには最大のプロジェクトになった。
もちろん、盗み見しかできない。
視線に気付かれてはいけない。
これではなかなか情報に偏りがある。
放課後、学校の隣り合わせにある図書館に彼がよく来るのは幸いだった。
本を探している彼の側を通るふりをして、背後からシャツの襟から首筋をのぞく。
背中の肩甲骨のあたりに黒子を見つけた時は興奮して、夜想像の彼のその黒子を舐めて吸い続ける妄想で何度も抜いた。
図書館のトイレにいく彼の隣りに行きたい衝動に何度もかられているが、それはさすがに我慢している。
小便器があるから、隣り合ってするフリして彼のソコを診たい。
見たいけど、みたら勃起する。
さすがに隣りに勃起した男がいるのはヤバいだろ。
でも、見たい。
ソコをリアルにした想像の彼が欲しい。
だけど、必死で耐えている。
話しこそしないけれど、同じ図書館にいてれば、背の低い彼が本が取りたくて困っているのをとってやることもある。
もちろん、言葉なんかかけない。
とってわたしてやるだけだ。
彼はお礼を言うけど、オレはそれを聞かずに立ち去る。
だって何を言えばいい?
向こうはこちらを知らない可能性もあるのだ。
オレは「空気」と言われる程の存在感のなさだからな。
おかげで虐められることもないがな。
それより、渡した時見た親指の第一関節に疵痕があったことこそ大事なことだ。
オレは今日の夜、その疵痕を舐めながら、彼にぶち込む妄想をする。
疵痕、黒子、少しずつ少しずつ。
彼をリアルにしていく。
見ることさえ出来ない日が来ても、彼を見れるように。
彼をそっと自分の中で組み立てる。
彼の全てを再現して、自分だけの彼をつくりたい。
彼が知ったら気持ち悪がるだろうけど、彼が気付かなければ、彼が気を悪くすることもないだろう。
彼に触れたりしない。
彼の気持ちを害したりしない。
追いかけたりもしない。
ただ、見れる機会がある時に、彼の姿を心に留めたいだけ。
そして、その想像の彼を想像の中で触れたいだけ。
それがオレの恋だった。
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