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告白までの距離 第7話
暗闇の中で目が覚めた。
酷く狭い場所にいることが解った。
何かあたたかいものを抱いている。
暖かい・・・何これ、人みたい。
「ん・・・んっ」
それは蠢いていて、唸っていた。
何これ。
でも、いい匂いがするから何でもいい。
暖かい。
抱きしめよう。
蠢くそれを抱きしめた。
なんか、すごく幸せだった。
鼻に柔らかい感触がある。
何、これ。
髪の毛?
ん?
何?
オレはそれを抱きしめたまま撫で回した。
痩せた背中、小さな尻。
これって。
これって。
もしかして。
何度となく見た細い尖った肩。
細い首筋。
見えなくてもわかる。
これ。
今、オレが抱きしめるこれ。
彼だ。
オレは真っ暗な狭いどこかで彼を抱きしめていた。
何で!!
オレは焦る。
夢?
いや、夢なら真っ暗じゃないし、もう彼に突っ込んで、ガンガン腰をぶつけているはずだ。
慌てて彼から離れようとして、ほとんど身動きが取れないほど狭い馬車に閉じ込められていることと、酷く後頭部が痛むことに気付く。
後頭部の痛みにバットで殴られたことを思い出した。
彼は、彼は無事なのか?
オレみたいに殴られていないのか?
「大丈夫か?」
オレは言う。
胸の中で彼が蠢く。
「んっ!!んっ!!」
こごもった声。
彼の声がおかしい。
何でこんなにもぞもぞしか動けない?
オレは震える指で、彼の身体をなぞり確かめる。
いや、これは彼の無事を確認するためだから。
仕方ないことだから。
細い首筋をたどり、顔。
唇・・・。
ん?
顔にガムテープのやうなモノが貼られているのがわかった。
これで声が出ないのだ。
オレは痛まないように気をつけて、口の上に貼られたガムテープを剥がした。
彼は深呼吸し、むせた。
「大丈夫か?」
オレは聞く。
ケガなどしてないか?
思わず抱きしめてしまったのは心配ゆえだ
「君こそ。あと、僕、手も縛られてるんだ」
彼が言った。
オレは多少やましい気持ちを感じながら・・・いや、これは仕方ないから・・・彼の背中を撫で、お尻のところで縛られた彼の両手首を発見した。
解く。
響くエンジン音。
揺れる振動。
間違いないここは車のトランクだ。
「殴られて動かなくなったから・・・意識がもどらないかと思った・・・その後、僕は縛られて、ここに君と入れられて」
彼の説明が裏付ける。
「どれくらいの時間・・・移動してる」
オレは聞く。
ああ、ダメだ。
頭が働かない。
「20分くらい・・・?」
彼が言った。
「そっか・・・」
オレは呻き声をあげる。
ダメだ。
現状をなんとかしなきゃいけないのに、これじゃダメだ。
ダメだ。
胸に彼の暖かい息を感じるのも、彼の髪の匂いを鼻先で感じるのも、彼か行き場所がないからオレの背中に手を伸ばしているのも、ダメだ。
オレの血は完全に下半身に周り、思考が全く働かない。
勃起してる。
めちゃくちゃしてる。
ガンガンしてる。
「大丈夫・・・痛む・・・」
彼が身じろぎして、息をのむ。
気付かれた。
そらそうだ。
これだけ密着してるんだから。
「・・・お前、なんでそんなに甘い匂いするんだよ!!」
オレは半泣きに成って言う。
八つ当たりだ、こんなの。
「君の血で汚れたからサカイ先生がシャンプーかしてくれたからかな?」
彼が小さい声で言う。
彼はオレの鼻血をまともに浴びたっけ。
サカイ先生は担任の女性教師だ。
いや、確かに甘い香りは女モノのシャンプーの匂いだ。
でも、そういうんじゃない。
でも、あとでシャンプーのメーカーを聞こう。
買ってかえってオナニーする時に嗅ぐ。
いや、そういうんじゃない。
「畜生。何にも考えられねぇ・・・こんなもん勃ててる場合じゃないのに」
オレはぼやく。
密着してる身体がヤバい。
髪の中に指をいれて胸に押し付けて、髪の匂いを存分に嗅ぎたい。
身体の全てをこの手でなで回したい。
両手を彼から離して必死で耐える。
そんな場合じゃないのに。
頭が動かない。
「考えないと・・・考えないと・・・」
オレは譫言のように呟くのに、身体は勝手に彼の脚に自分の股間を押し付けてしまう。
何してんだ。
ダメだ。
オレは耐える。
夢にまでみた、夢でしか見ないはずだった身体がこの胸の中にある。
決して嗅ぐことのないはずだった匂いを嗅いでる。
唇に髪か触れている。
泣くほど嬉しいのに、泣くほど辛い。
しかも今はそれどころではないのだ。
「ごめん・・・キモイかもしれないけど、オレ出してもいい?オレ、出さないと・・・冷静に考えられない」
オレは呻いた。
キモイだろ。
嫌われるだろ。
でも、最初から好かれることなど考えてなかったからそれはいい。
彼に何かしてしまうよりはそれでいい。
「ここで?」
彼は驚くように言った。
「・・・ごめん」
オレは謝った。
もう何も考えられない。
オレは密着したまま、自分のズボンのベルトをほどき、ファスナーを下ろし、ガチガチになってるそれをとりだした。
「ごめん・・・」
オレはまた謝った。
嫌われる。
平気なはずなのに、何故つらい。
「ごめん・・・出したらすぐ、逃げる方法考えるから、絶対にお前は逃がしてやるから」
オレは言った。
出来るだけ彼に触れないように身体を縮こませ、擦り始める。
気持ちいい。
こんな時なのに。
妄想するどんなセックスより、実物の彼がいるだけでただ擦るだけの行為がたまらなく気持ち良かった。
「あっ・・・」
思わず呻いてしまう。
彼は引いてるだろう。
泣ける。
でも気持ちいい。
その時、背中に回されたままの彼の腕に力が入った。
ぎゅっ
抱きつかれてる?
彼の息か荒いことに気付く。
そして、抱きつかれ腰を押し付けられたからこそわかること。
これ、勃起してる。
彼も勃起してる。
異様な空間で、オレの興奮が伝染した?
命の危機には性欲が増すってやつ?
「あの・・・あの・・・」
オレは彼に言う。
しどろもどろだ。
何を言う気だオレ。
「オレのと一緒にしようか?・・・これ」
オレはそう言ってたし、彼のズボンに手をかけていた。
「嫌なら言って・・・しないから」
そう言いながらオレは彼のズボンのファスナーを下ろし、下着をずらし、彼のソレを取り出していた。
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