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告白までの距離 第8話

 「嫌なら・・・言って・・・お願いだから言って・・・」  オレは懇願した。  嫌だと言ってくれたなら止められる。  でも、彼は何も言わなかった。  ただ、オレの指が触れた時、息を詰めただけだった。    言ってくれないから止められない。  オレは泣いた。  本当に彼に触ってしまうことが辛くて泣いた。  こんなことすべきじゃない。  でも、止められなかった。  彼の拒否がないなら止められることなど出来なかった。  オレのより随分小さいそれを夢中になって撫で回した。  見えないからこそその形をこの手でしりたかった。  小さな吐息が聞こえて、頭がおかしくなりそうだった。  濡れてる。  睾丸まで揉んでやったら、呻き声が漏れた。  「一緒にする、からな」  オレはオレのを押し付けた。  彼が息を飲んだのがわかった。    それでも嫌だと言わないから・・・彼の手にオレのを握らせた。  「うそ・・・大きい」  声がして、そんなこと言うからまたデカくなって、彼が身体をひきつらせた。  「嫌って言って」  そう言いながら思う、嫌だと言わないで。  彼の手ごとオレと彼のをあわせてオレは擦り初めていた。    「うぁっ・・・ああっ」  彼が声をあげる。    「はぁっ・・・ううっ」  オレもうめく。    ゴリゴリと擦れあう。  彼のモノと彼の手で擦られている。  彼の匂い。  彼の声。  「たまんね」  そう言いながらオレは泣いていた。  気持ち良かった。  性器以外に触れるべきではなかった。  なのに首筋を吸っていた。  歯をたてて甘く噛んで、音を立てて吸った。舐めた。    喰いたいそうおもった。  思わずにはいられなかった。  全部喰ってオレのにしたい。  そんなこと望むことさえだめなのに。   互いの性器をこすりつながら擦する。    「ううっ・・・ああっ・・・ふうっ」  彼が零す声が愛しい。      首筋を舐めたら、声の高さが変わる。  気持ちいい?  そう囁きたいのを堪える。  これは、彼には忘れたいことになる。   非常事態でおかしくなっただけのこと。  余計なことはするべきじゃない。    本当は吸いたい唇の代わりに、首筋を吸い、舐める。  甘い。  そんなはずはないのに甘い。  耳の裏の匂いを嗅ぎ、そこも舐めた。  「ああっ!!」  先に達したのは彼だった。  でも、オレのと擦り続ける。     「ああっ・・そんな・・・出たのに」    彼が悲鳴をあげた。  出たばかりなのに擦すられるから、辛いのだ。    辛いだけじゃなくなる。  散々オナニーしてきたオレは知ってるから止めない。     「お願い・・・止め・・・ああっ!!」  泣き声が、なのに甘い。  ごめん。  もう今はムリ。  彼の指。  彼のチンポ。  泣きながら悶える彼の声。  何もかもが、脳を痺れさせた。    見えないことか一層、感覚を鮮やかにした。  思わず、強く歯を首筋に立てていた。  「いやぁ!!!」   オレが達した時、彼も泣きながら精液ではないモノを吐き出していた。  さらりとした液体。  潮とか言われるヤツだ。     「ひぃ・・・はあっ・・・・」   身体をひきつらせてる。    オレもオナニーで同じことした時は・・・意識なくなるかと思ったもんな。  オレは彼を抱きしめた。   そんなことするべきではなかったのに。  愛しすぎた。  オレの宝物にしてしまいたかった。    そんなこと無理なのに。   強く抱きしめたら壊してしまう。  優しく優しく、抱きしめて、でも、自分との境目がなくなってしまうことを願わずにはいられなかった。  「ありがとう。ごめん。ありがとう」  オレは何度も言った。  拒否しないでくれた。  ごめん。    「絶対に助けるから・・・」  オレは泣きながら言った。  出すもんだしたら冷静になってきた。  さあ、考えろ。  彼だけは絶対に助けないといけない。  ハンカチでオレと彼の性器や手を拭うと恥ずかしくなってきた。  めちゃくちゃ恥ずかしい。    死にたい。  彼のズボンを整えてやった。       まだ彼は小さく震えてる。   優しくキスしたいのを堪える。  死にたい。  ごめん。    さて考えろ。  でも、オレは頭を回転させる。  死ぬのは彼を助けた後だ。    オレはトランクの内張りをなで回す。  車のトランクには大抵フェルト状の布が貼られた樹脂製のケースで、その下にあるワイヤーなどに触れないようになっている。  なぜ知ってるか?  マチルダがトランクから逃げ出したのはシリーズ第三作だ。  あの後、家の車や、兄貴の車、親戚の車、車という車のトランクを明けてまわって、その仕組みを調べたからだ。  ああ、やはりある。    古い国産車だな。  内張りを外すボタンがある。   外し方はそれ程難しくない。  オレは自分のメガネを外し、メガネの柄をつかってプラスチックのボタンの隙間に差し込み押し上げた。  これではずせる。  「何をしてるの?」  彼が不思議そうに聞く。    「トランクを開ける。この内張りの内側にトランクの鍵をあけるワイヤーがある。運転席でトランクを開けれるのはそのワイヤーが引っ張られるからなんだ。ここにそのワイヤーが通ってるそれを引っ張ればトランクはあくはずだ」  オレは内張りをめくり、指で探る。  あった。  これでトランクはあく。  

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