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籠の中の鳥~鳥籠 第4話

 まいった。  幼なじみは苦笑いする。    酷く遊んだツケがまわってきてしまった。  彼を手に入れると決めてはいた。   けれど、彼に触れられないことによる、押さえきれない性衝動を発散させるため立ったとはいえ、確かに必要以上に遊び過ぎた。  年齢や本名を隠し、夜の街で男や女と楽しんできた。    彼が眠った夜だとか、部活にかこつけてだとか、父親の仕事にかこつけてだとか。  嘘をついていたわけではない。    本当に用事があったついでで、彼に疑われなさそうな時に遊んでいただけだ。  大抵は一度限り。  上手なヤツなら勉強になるから数回は会った。  いつか彼とする時に、彼をとことん気持ち良くしたかった。  身体で縛れるくらいに。  セックスを嫌悪する彼とする以上、それくらいの技術がないと。  そう思った。  彼が嫌がる気持ちを抑えて嫌々セックスすることだけは避けたかった。    彼を夢中にさせたかった。  気持ちはくれるのを知ってる。  でも、彼は本当の僕を知っていて、本当の僕のことを好きなわけじゃない。  そう思っていた。  彼の潔癖症を煽ってまで他人から遠ざけていたことも、彼の潔癖症の原因を知っていてそれを黙っていることも、彼は知らない。  知れば自分を嫌いになるかもしれない。  だから、身体だけでも確実に手に入れたかった。  いつかセックスをする時に、自分に溺れてしまうように。  たくさん抱いた。  抱かれもした。  セックスについて知るために。  病気にだけは気をつけた。  彼とする時にそれじゃ困るから。    それ以外は散々楽しんだ。    大抵の相手はこちらも最低男だったから、セックスした相手も自分に執着しないはずだった。  相手のことなんか気にせず、好き勝手にやった。  イかせることだけにはこだわったけど、まあ、酷い扱いをしていたから、相手も二度と自分に会いたいとは思わないだろう。  酷い言葉を吐き、気持ちを踏みにじり、軽蔑しながら、でも行為だけは優しいセックスをしていた。  あれを良いというのは相当変態だろう。  ただ、勉強になりそうな時は相当優しくしてしまった。  相手を彼だと想定してセックスした時、とか。  抱かれる側の感覚が知りたくて、抱かれる側をしてみた時、とか。  面倒くさいことになってしまった。  幼なじみはため息をついた。    二人、面倒くさい奴らが出てきてしまった。  しかも二人とも、自分の本名などを知っている。  一人は合同練習で知り合った他校の選手。  綺麗な顔立ちが気に入った。  何より、セックスをしたことがないのが良かった。  遊ぶ相手の殆どは自分と同じで、見境無しにしているようらな奴らだ。  遊ぶ分にはむしろいい。  だけど、初めてである彼を抱く時に、そんな相手達だけの経験だけでは不安だった。  したことのない人間でも気持ち良くさせられるかを知りたかった。    自分に興味のある目を向けてくるくせに、気のない素振りをするソイツは間違いなく、セックスの経験はなかった。  少なくとも男とはないだろう。  丁度いい。  練習にはいい。  そう思った。  何度か抱いたなら、フェードアウトすればいい。  そこの学校との合同練習にはもう参加しなければいい。  綺麗な子だ。  セックスを覚えれば、相手なんていくらでも探せるだろう。  そう思った。  皆が帰った部室に引き止め、その場で押し倒して抱いた。  彼を想定して、優しく優しく、身体を開いた。  大人しく、震えながら唇を受け入れた時思わず笑った。  簡単すぎて。  あとはまあ、初めてでも充分慣らし、濡らしてはやることがコツだとわかった。  あとはどれだけ身体の力を抜けさせるか、だ。  散々試した。    最後はそれでも怖がって、挿入を拒否したけれど、そこは多少強引にいった。  してみないと練習にならないからだ。  でも初めてなのに中でイかせてやったし、終わってからも優しくしてやったのだから、文句を言われる筋合いはない。    その後も練習がてら、何度か抱いた。    最後はあえて酷くして、愛想尽かされるようにした。  ケガだけはししないようには配慮したけれど、モノのように扱い、手荒く扱った。  宝物のように抱いていたのから一転、オナホのように扱った。  病気の心配が無いから中で散々出した挙げ句、酷い言葉をたくさん投げつけ、部室に放置して帰った。  これで二度関わってこないはずなのだった・・・。  そこから何の連絡もしてないし、LINEもブロックしてる。  なのに。  昨日学校にまで押しかけてきた。  部活中に。  制服まで手に入れて。  言い含めて帰らせたけれど。  彼に見つかるのは避けたい。  なんとかしなければ。  それに父親の仕事相手に手を出したのも間違った。  抱かれる感覚が知りたかっただけだ。  される方には興味がなかったけれど、知ってるにこしたことはない、と思った。    彼のためなら何でもできた。  だから、父親の取材旅行に付き合った時、同行したカメラマンの青年に誘われた時、応じた。  慣れてそうだし、仕事相手の息子にこっそりとは言え手を出すなら、無茶はしないだろう。  それくらいの理由だった。    旅行中、毎晩父親がどこかで誰かと夜を過ごす間(父親が自分そっくりの最低男であることは知っていた)、青年と寝た。    青年は優しかったし、確かに青年とのセックスは悪くはなかった。  抱かれる方は初めてだったのに気持ち良くさせてくれた。  十分参考になった。  身体を開かれるタイミング。  そこを擦られたらどうなるのか、激しくされたらどうなるのか。  挿れながら揺さぶられ、気を失うまでするとどうなるのか。  青年は甘く囁きながら教えてくれた。  本当に優しく情熱的な抱き方は気にいった。  いつか彼を抱く時の参考にしようと思った。     でもそれだけで、二度と関わるつもりはなかった。  抱かれるよりは、彼を抱く方がいい。    愛してる。  一目惚れだ。    そんな青年の台詞もまともに信じてはいなかったのに。  悪い大人が子供を弄んでただけだろう。  まあ、ちょうど良かった。  そう思っていたのに。  無視しても無視しても電話がかかってくる。  仕事相手だから優しくしすぎてしまったせいか。  今でも父親の仕事にかこつけて連絡してきては口説いてくる。  断っても断っても。  うざい。  これも彼に知られないようにしなければ。    二人をどうするかについて考えなければ。  いらないのだ。  もう二度と。  彼だけいればいい。  なんとかしなければ。  ため息をつきながら、彼の家の方へ帰っていく。  彼が夕食を作って待っていてくれている。  彼だけでいい。  

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