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第6話・遊び。遊ぶ。えっと、これもアソビ?(前編)
☆
オレが仙蔵 さんの家に世話になるようになって一週間が過ぎた。
思いもしなかった再会を果たした三毛 とは相変わらず仲良くやってる。
今やもっぱらここの日当たりのいい広い縁側で二人並んでゴロゴロ過ごすのがオレたちの過ごし方になった。
――仙蔵さんはやっぱり優しい。仙蔵さんへの想いが強すぎて苦しくなって泣いちゃう時は、やっぱり抱きしめて頭を撫でてくれる。
それが嬉しくて、余計に涙が出ちゃうけど……。
きっと仙蔵さんにとってオレは孫と接するような感じでいるんだと思う。
オレとは恋愛に発展しないんだ。
ああ~っ!
ダメダメ!
こういうことを考えるからまた悲しくなる。
泣いたらまた仙蔵さんを困らせてしまう。
あんまり泣かないようにしなきゃ!
決意を新たにしていると――。
「茶虎 。どれ、一緒に遊んでみるか?」
「あそぶ?」
仙蔵さんはそうやって四角い木のテーブルを持ち出した。
あ、オレ、それ知ってる。
将棋っていうんだぜ?
大小様々なコマを使って相手と戦う頭脳戦だ!
それはオレが猫だった頃、人間がそれで遊んでるのを塀の上から見たことがある。
「やってみたい!」
勢いよく挙手してみたものの――。
だけどオレ、ルール知らねぇ~。
きっとオレと遊んでも仙蔵さん楽しくならねぇよ。
「だけどオレ将棋知らない……」
がっくり項垂れるオレ。
“どうやっても、
どんなに背伸びしても、
貴方には届かない。“
叶わない恋だって思い知らされる。
胸がギュってする。
心臓が痛い。
「そんなことはねぇよ。なあに簡単さ。三毛とはよくこうして遊んでいるんだが、お前さんは好きかな?」
「えっと?」
だけど仙蔵さんは口角を上げて問題ないとそう言う。
「?」
どういう意味?
オレってバカだからさ。
仙蔵さんの言っている意味がわかんなくて首を傾げる。
仙蔵さんは、「まあ見てろ」とそう言うと、将棋のコマをひとつずつ立てて並べていくんだ。
小さな木でできたテーブルじゃなくて、畳の上に――。
☆第6話・遊び。遊ぶ。えっと、これもアソビ?(前編)/完☆
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