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第7話・オレ、貴方のためなら命なんていらないんだ。(中編)
「仙蔵 さん? いるの?」
――裏の倉庫。
ここは滅多なことでは足を運ばない。
ジメジメしているのは夜通し日陰で陽が当たらないからだ。
仙蔵さんに捨てられると思うと足は震えるし辛くて泣きそうになる。
だけどこれで終わりにさせたいのなら仕方ない。
煩わしいと思われるのが怖いから……。
大好きな人に嫌われたくない。
だけど。
なんかおかしい。
仙蔵さんの姿が見当たらないんだ。
「誰だお前らっ!」
代わりに出てきたのは、スーツ姿の、見たことのない顔ぶれの男二人と……オレを呼びだした稲坂 さんだった。
オレはあっという間に囲まれてしまう。
「こいつが龍虎組 、去 なしの仙蔵の男なのか?」
「へい。俺が潜って調べたんでさぁ。間違いございやせん」
稲坂さんがにやりと笑う。
「稲坂さん? なんで……」
なんかこいつらのこの言い方。
同じ仲間だとは思えない。
稲坂さんはオレの身の周りの世話役として仙蔵さんから命じられていた。
同じ仲間じゃなかったのかよ?
オレが唖然とする中でも値踏みするような目が気持ち悪い。
「っつ!」
(仙蔵さんっ!)
オレは怖くなって踵を返した。
だけどすぐに腕が掴まれ、拘束されてしまった。
「お前には悪いが、俺が荒居組 、亡き総長に代わって組織を束ねるためだ。あの頑固ジジイの首を取ってやろうと思ってな。弱点であるお前を使わせてもらったってわけだ。まあ悪く思うなよ?」
一際恰幅のいい男がそう言うと、俺の首根っこを掴んだ。
絶体絶命。
オレ、すげぇピンチだ。
だけど、さ。
こいつらバカだ。
可笑しすぎて仕方がねぇぜ!
「あははははっ、あんたらばっかじゃね?」
オレは笑い声を上げた。
「何が可笑しい!」
だって面白いじゃねぇか。
「オレは弱点なんかにはならねぇよ。仙蔵さんはオレをなんとも思ってない」
仙蔵さんにとってオレは性処理の道具。
ただの遊び相手だ。
絶対に仙蔵さんの弱点にはならない。
自分が口にした言葉が胸に突き刺さる。
ズキズキ痛むけど、彼にとってはその方がいい。
これで――良かったんだ。
涙で視界が歪むけど、そればっかりはしょうがない。
だってオレ、仙蔵さんが好きだから……。
☆第7話・オレ、貴方のためなら命なんていらないんだ。(中編)/完☆
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