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第11話・貴方の気持ちが知りたい。(後編)

 オレは今、大好きな仙蔵さんと一緒に褥で寝転んでいた。 「せんぞうさんは、オレがすき?」  何を今さらって思われるかもしらねぇけど、オレはそっと訊いてみる。 「ああ、こんなに溺れるなんて思いもしなかった」 「奥さんよりも?」  これはずっと思っていたこと。  いつか聞きたい。  だけど聞けなかったこと。  オレのこと、仙蔵さんはどれくらい好きなのか知りたいって思ったから。 「茶虎?」  女の人と比べたって勝てる気がしない。 「……なんでもねぇ」  やっぱいいや。  オレは悲しくなって顔を伏せた。  鼻の奥がツンってする。  涙、出そう。  仙蔵さんが好きだって言ってくれてるんだからもういいじゃん。  そう思うのに、もっと欲しいと強欲になっていくオレの心。  仙蔵さんの一番じゃないと嫌だって思ってる。  これじゃあ、いつかきっと嫌われる。  今だけでも考えられないくらい幸せなのにさ……。  いいじゃん、今好きだって言ってくれてるんだからさ。  もっと欲しがってどうするんだよ。  いい加減にしなきゃ。  まるで手に入らない玩具を欲しがる子供みたいだ。 「……そうだなあ~」  仙蔵さんはそう言うと、続けた。 「俺の子弟達は負けん気も強えし血の気も多い。そんな奴らを泣かしちまうほど暴れる茶虎には驚かされた」  ――うっ。 「荒居組の奴らとやり合って自分の命も投げ出しちまう無鉄砲さ」  ――ううっ。  だってあれは! 「仙蔵さんが撃たれるって思ったから!」 「仙蔵さんが死ぬなんて嫌だっ!」  ガバッと顔を上げて仙蔵さんを見上げるオレ。  そうしたら、目の前には……。  目尻に小皺を作って、  微笑を浮かべる仙蔵さんがいたんだ。 「!」  なんて格好いいんだろう。  穏やかに笑う仙蔵さんの表情があまりにも優しそうで。  オレの胸がキュンっていった。 「お前は前妻にも誰にも負けんくらい、突拍子もないことをして俺を驚かせる。次は何をしでかすのかと、想像も付かんことをしてくれる。まったく目が離せん」  えっと? 「それって……」  つまり。  いいことなのか?  なんか……さ。  全然、褒められてる気がしない。  むううっ! 「もういいよっ!」  ぷいっと顔を背けるオレ。  クツクツと笑う声が背後から聞こえる。  仙蔵さんの笑い声が心地良い。  それだけでオレが特別だって思わせてくれる。  そして……。  仙蔵さんは静かに口を開いた。 「暴れん坊で無鉄砲で。だが、自分の命も投げ出して俺を助けてくれようとする健気さ。可愛くって仕方ねぇよ。誰にも渡さんし手放す気もない。なあ、茶虎」  力強い腕がオレを包み込む。 「俺はお前を誰よりも愛している」 「……うん」  涙、出そう。  嬉しくて嬉しくて……。  誰よりもなんて、絶対に言ってくれないと思っていたから……。 「うん、うん……」 「ほら、泣くんじゃねぇよ。可愛い顔が台無しじゃねぇか?」 「っひ、うん……っふえっ!」  “……困ったな。“  仙蔵さんがう~んと唸ってそう言った。  困った顔の仙蔵さんも大好き。 「へへっ」  鼻をグズグズさせながら、オレは分厚い胸に飛び込む。  仙蔵さんにすべてを委ねるんだ。 ☆第11話・貴方の気持ちが知りたい。(後編)/完☆

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