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茶虎、三毛と奈良漬けで酔う。(中編)

 テーブルの上には酒、寿司、肉料理など所狭しと豪華な食べ物が乗っている。  ある者は下座で腹踊りを披露し、またある者は三味線で優雅な音を奏でる。一同はそれに合わせて歌を歌い、踊り出す。  夜もすっかりふけ始める頃、酒をかっ食らい、すっかりできあがっていた。 「それ何?」 「あ、オレも気になっていたんだ。これ旨そうじゃん? オレも飲みてぇ!」  一同が、がぶがぶと飲み干しているそれを見た三毛と茶虎は手を伸ばす。  しかしそれは――。 「あああああっ! それはいけやせん」 (組長と若頭に殺されちまう!!)  酔いとはどんな状態であっても覚めるものだ。  未成年に酒を飲ませるわけにはいかない。  取り分け、あの男二人が大切にしている色なら特に、である。  仙蔵と龍の怒りに触れるわけにはいかない。  一同は慌てて茶虎から酒瓶を奪い取った。 「じゃあ、これは?」  三毛はひょいっと茶色い食べ物を摘み上げた。 「あ、それは奈良漬けっていうお漬け物でさあ」 (これなら大丈夫だろう) 「食ってみてくだせぇ、なかなか旨いんでさあ」 「いっただっきまぁす!」  モシャモシャ。  ポリポリ。  二人から軽快な噛み砕く音がする。 「旨いでしょう?」  同じように奈良漬けを頬張った幹部の一人が三毛と茶虎に同意を求めた――のだが。 「あれ? オレ、なんか頭ぼ~っとしてきた」 「えっ?」  茶虎の返事に一同は硬直した。  二人の顔を覗き込めば頬が朱に染まっている。  それだけではない。  目は胡乱(うろん)として焦点が合っていないように思える。 「ちょっと待て、酒飲ませたのか?」  ブルブルブルブル。  数人が首を横に振る。  それはもう思いきり。  力強く。 「じゃあなんで、三毛お嬢と茶虎あにさんが顔真っ赤になってんの?」 「し、知らねぇぜ? だって俺らが渡したのって、奈良漬け……」 「奈良漬け……ってぇまさか! あにさんたち奈良漬けで酔ったのか?」 「うにゃあああ~」  三毛は四つん這いになって大きく伸びをしている。  まるで猫のようだと思った。  彼はまだいい。  しかし、である。 「いっちばあんっ! ちゃとら、ぬぎまぁす!」 「うぇえええええっ!?」 「うわああああっ! やめてくだせぇ!」 「あにさんを止めろっ!」  一同は突然上がった呂律(ろれつ)が回っていない明るい声に驚き、そして戦慄いた。 (茶虎あにさんの裸とか色っぽすぎる!) (見てみたい!) (だけどもし、万が一にでも裸なんて見たら……) 「組長に殺されるっ!!」 「うわああああっ!」 「止めろ止めろっ!!」 「あにさん、早まらねぇでくだせぇっ!!」  幹部達は半べそをかき、たじろいでいる。  その間にも、茶虎はパンツを細い下肢から抜き取った。  ポイっと投げる。 「ぎゃあああっ! あにさああああああんっ!」  泣き叫ぶ幹部達。 「みんなで取り押さえるぞ!」 「お、おうっ!」 「はらせ~、おれはぬぐんら~」  一同は着物を脱ごうとする細い身体を押さえ込む。  しかし流石は強者だ。酔っていてもその力は健在だった。 「じゃまらんらよ、おまえら~!」  幹部数人は千切っては投げ、千切っては投げを繰り返される。

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