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発情期。(前編)

 やばい。  そう思ったのはある日の早朝。  ふと身体に熱を感じて目覚めると、身体が痛いほどジクジク疼き出すしソワソワするし。  だからオレ、「ああ。発情期に入ったんだ」って思った。  もちろん、人間には発情期なんてものはない。  だけどおかしいかな。  オレにはそれがある。  そして元はオレが猫だったってことは仙蔵さんは知らない。  だから当然仙蔵さんに知られるわけにもいかなくて、必死に身体の疼きを我慢する。  だけどさ、仙蔵さん。  オレのすぐ側で寝ているから、様子がおかしいってすぐにバレちまうんだ。 「茶虎? どうした?」  ほら、やっぱり。  真っ直ぐな目が心配そうに様子を窺ってくる。 「なんでも、ねぇっ!」  何もかもを見透かされそうな真っ直ぐな眼差しは、時と場合によっては居心地が悪くなる。  オレは仙蔵さんから逃げるように寝床から起き上がる。  だけど身体がとにかく疼くんだ。  グラって視界が揺らいだ。疼く身体じゃ二本の足で踏ん張ることができなかった。  倒れる!!  って思った瞬間、たくましい腕に抱き寄せられた。 「茶虎、熱でもあるのか?」  いつもより体温が高いことに気づいたのか、仙蔵さんはオレの顔を見下ろした。 「……ッツ!」  返事なんてできない。  だってこの格好。すごくマズい。  オレ、仙蔵さんの片膝の上に跨って座っているんだ。  昨日の夜も仙蔵さんに抱かれているから下着は身に着けてない。  あるのはこの薄い着物だけ。  仙蔵さんの上に跨っている足の間には……。 「や、だ……」  いやなのに。  発情期だって知られたくないのに……。  オレの意思に反して仙蔵さんの膝の上で淫らに腰を揺らしてしまう。  オレを見ないで。  放って置いて。  こんなはしたないオレのことなんて、きっと嫌いになる。  仙蔵さんに嫌われたくない。  せっかく、  せっかく両想いになれたのに……。  傍にいられるのに……。  人間になれたのに……。 「ヤだ……」  だだでさえ、ぐらぐらするのに視界が滲んで悪くなる。  ポロポロ涙まで流れる始末だ。  も、最悪。  こんなウジウジしてるオレも嫌われる。  捨てられちゃう。  どうしよう。  どうしよう。  なんとかして涙を止めようと思うのに、余計に悲しくなって涙が出てくる。 「茶虎?」  そんなオレの気持を知らない仙蔵さんは、心配そうに俺の名を呼ぶ。  だけど仙蔵さんがオレの状態を知ったのはすぐだった。 「……お前」  熱がこもった吐息が俺の耳孔に触れる。  そうかと思ったら、仙蔵さんがオレを受け止めている方の膝を揺すってきた。  ユサ、ユサ。  仙蔵さんの膝が密口に当たる。 「やぁ……」  揺すられる度、擦られる度にオレの先端から溢れた蜜がヌチャヌチャ音を立てる。 「あ、やら……揺らさらい、れ……っはぅ」 「朝から可愛い声を出すじゃねぇか。はしたなくトロトロに濡れてやがるじゃねぇか。なぁ?」  大きな骨張った手がオレの腰を固定して、膝が擦る。

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