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この恋の終わり。(前編)

「兄貴、申し訳ありやせんが今夜はおひとりで寝てくんなせぇ」  それは突然だった。  ある日の夜、子弟のひとりにそう告げられたんだ。 「え、なんで?」  ドキッ。  オレの心臓が大きく跳ねた。 「組長がおひとりでおやすみになりたいとおっしゃってやした」  今まで仙蔵さんとは寝起きはもちろん一緒で何をするにしても絶対にオレをおいてけぼりにすることなんてなかった。  きっと誰だってひとりの時間は欲しい。  オレにつきっきりなんて疲れるよな。  オレはそう思って悲しくなる気持ちを押し殺してガマンしたんだ。  次の日も、また次の日も。  ひとりきりの夜が続く。  だからさ、流石のオレでも避けられてんのかなって思うようになった。  いくらなんでも、それくらいはわかるよ。  いったい何がいけなかったのかな。  発情期が問題だったのかな。  やっぱりオレなんかじゃ仙蔵さんは満足しなかったのかな。  男同士だし。  女性の方がいいのかもしれない。  ……もう。  オレに、飽きたのかな……。  そして仙蔵さんと顔を合わせなくなってから三日目の夜が来る。 「兄貴、今夜も……」  今夜もまた、子弟がそう言いに来た。  ああ、まただ。  だったらオレだって考えがある!  面と向かって話し合うまでだ!!  本当は、キラワレてるのに会うなんて怖い。だけどいつまでも逃げていたって何も解決しねぇし! 「どこ?」 「えっ?」 「仙蔵さんのとこ」  子弟の胸ぐらを引っ掴んで半ば強引に聞き出すオレ。 「あっあの!」 「どこだって聞いてんだよ!」 「っひぃぃぃ!」  子弟は恐る恐るといった様子でようやく口を開いた。 「こ、この先にある離れの部屋でごぜぇやす」 「さんきゅ」  ねぇ、仙蔵さん。  オレの悪いところがあったなら直すから。  だからさ、お願い。  一番じゃなくていいから。  玩具でもいいから傍にいさせて。  そう、お願いするために――。 「っひ、っく」  今から仙蔵さんに会おうっていう時なのに、オレの目からは涙がひっきりなしに流れてく……。  挙げ句の果てにはしゃくりまで上げて。  女々しいったらありゃしねぇ。  ほんとう、こんなだから愛想尽かされちゃうんだよな。 「も、やだ……」  泣き虫なオレなんて嫌い。  仙蔵さんに嫌われちゃうオレも嫌い。 「せんぞ、さ……っひ、っく」  オレは泣きながら離れに向かった。

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