29 / 45
この恋の終わり。(後編)
三毛は可愛い。
だから龍がどれほど三毛を想っているのかもわかる。
オレはどうやっても三毛にはなれねぇ。
もし、仙蔵さんは三毛みたいな相手を欲しているのなら、オレには無理だ。
そんなことは知ってる。
嫌われても良い。
捨てられるのは悲しいけれど、でも。
仙蔵さんがオレの顔も見たくないっていうのなら、出て行く。
だから、神様。
どうか仙蔵さんを助けてください。
「仙蔵さんの様子がおかしいんだ。すごく熱いし、震えてるし。オレ、どうしたらいいのか……どうしよう。仙蔵さんが死んじゃう死んじゃうっ!」
涙が止まらない。
しゃくりを上げながら三毛に助けを求めると、大きな手がオレの頭を撫でた。
「三日前から具合が悪そうだったからな。熱が出たのか。大丈夫だ。爺さんはそう簡単に死ぬタマじゃない」
龍はいつの間にかすぐ側にいて、パニックになっているオレを宥めてくれる。
「三毛、洗面器に水を入れて爺さんの部屋に来てくれ」
「うん!」
「俺たちは爺さんの部屋に先に行こう」
「っひ、ふぇ、えぐっ」
コクンと頷くオレは、だけどまだ嗚咽が止まらない。
そんなオレを連れて仙蔵さんの前にしている龍は、すごく頼りになった。
「服を着替えさせるぞ?」
すごい汗を掻いている仙蔵さんを目の前に、龍はオレに指示を飛ばす。
「うん、っひ、うん……」
龍に言われるがまま、仙蔵さんの着物を脱がせて、その間に手早く龍が布で汗を拭いていく……。
「持ってきたよ」
仙蔵さんの着替えを済ませた頃。
ちょうどタイミングよく、三毛は龍に言われたとおり、水を張った洗面器とタオルを持ってやって来た。
「このタオルを水に入れて、水気を絞って頭に乗せてやればいい。タオルが生ぬるくなったら繰り返せばいいから」
「うん、うん」
「俺たちがいると邪魔になるから部屋に戻るが、何かあったら声をかけてくれてかまわないからな?」
「茶虎、大丈夫?」
三毛の細い腕がオレを包み込む。
あたたかな体温がほんの少しオレを安心させてくれた。
「だい、じょうぶ。やってみる。……ふたりとも、ありがとう……」
パタン。
オレが礼を言い終えたかと思えば、障子が閉まった。
部屋には、うなされている仙蔵さんとふたりきり。
オレは必死になって、龍に言われたとおり、タオルを水に浸して、絞って、おでこに乗せて……を繰り返した。
神様、お願いです。
仙蔵さんを助けてください。
オレ、仙蔵さんが生きてくれていたら何もいらない。
傍にいられなくてもいいから……。
だから、どうかお願いします。
☆この恋の終わり。/完☆
ともだちにシェアしよう!