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この恋の終わり。(後編)

 三毛は可愛い。  だから龍がどれほど三毛を想っているのかもわかる。  オレはどうやっても三毛にはなれねぇ。  もし、仙蔵さんは三毛みたいな相手を欲しているのなら、オレには無理だ。  そんなことは知ってる。  嫌われても良い。  捨てられるのは悲しいけれど、でも。  仙蔵さんがオレの顔も見たくないっていうのなら、出て行く。  だから、神様。  どうか仙蔵さんを助けてください。 「仙蔵さんの様子がおかしいんだ。すごく熱いし、震えてるし。オレ、どうしたらいいのか……どうしよう。仙蔵さんが死んじゃう死んじゃうっ!」  涙が止まらない。  しゃくりを上げながら三毛に助けを求めると、大きな手がオレの頭を撫でた。 「三日前から具合が悪そうだったからな。熱が出たのか。大丈夫だ。爺さんはそう簡単に死ぬタマじゃない」  龍はいつの間にかすぐ側にいて、パニックになっているオレを宥めてくれる。 「三毛、洗面器に水を入れて爺さんの部屋に来てくれ」 「うん!」 「俺たちは爺さんの部屋に先に行こう」 「っひ、ふぇ、えぐっ」  コクンと頷くオレは、だけどまだ嗚咽が止まらない。  そんなオレを連れて仙蔵さんの前にしている龍は、すごく頼りになった。 「服を着替えさせるぞ?」  すごい汗を掻いている仙蔵さんを目の前に、龍はオレに指示を飛ばす。 「うん、っひ、うん……」  龍に言われるがまま、仙蔵さんの着物を脱がせて、その間に手早く龍が布で汗を拭いていく……。 「持ってきたよ」  仙蔵さんの着替えを済ませた頃。  ちょうどタイミングよく、三毛は龍に言われたとおり、水を張った洗面器とタオルを持ってやって来た。 「このタオルを水に入れて、水気を絞って頭に乗せてやればいい。タオルが生ぬるくなったら繰り返せばいいから」 「うん、うん」 「俺たちがいると邪魔になるから部屋に戻るが、何かあったら声をかけてくれてかまわないからな?」 「茶虎、大丈夫?」  三毛の細い腕がオレを包み込む。  あたたかな体温がほんの少しオレを安心させてくれた。 「だい、じょうぶ。やってみる。……ふたりとも、ありがとう……」  パタン。  オレが礼を言い終えたかと思えば、障子が閉まった。  部屋には、うなされている仙蔵さんとふたりきり。  オレは必死になって、龍に言われたとおり、タオルを水に浸して、絞って、おでこに乗せて……を繰り返した。  神様、お願いです。  仙蔵さんを助けてください。  オレ、仙蔵さんが生きてくれていたら何もいらない。  傍にいられなくてもいいから……。  だから、どうかお願いします。  ☆この恋の終わり。/完☆

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