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三毛と茶虎、人助けをする。(中編)
「今日が撮影の日でね。破産覚悟でモデルさんを雇うことにしたんだ、だけどモデルをお願いしていた子と連絡がつかなくなってしまったんだ。お金は先に渡しちゃったし」
えっ?
「それって、詐欺なんじゃ……」
「うわ~ん、やっぱり君もそう思うかい? どうしよう! やっぱり死ぬしか!」
思ったことをまんま口にしたのがいけなかった。
オレの言葉を合図にして、男の人はまた柵から身を乗り出す。
「だめー!!」
「だからやめろって!!」
ぜぇ、ぜぇ。
オレと三毛は必死に引き止め、
「ボクたちがお手伝いするから。モデルさん探しするよ」
三毛は大きな声で提案した。
マジかよ。
三毛の言葉にオレはげんなりした。
ハッキリ言って、オレは三毛ほどお人好しじゃない。
どっちかっていうと、自分が良かったらそれでいいか的な。
だからぶっちゃけ男の人がどうなろうと関係ない。
だけど、まあ。
目の前で命を絶たれるのもすごく寝覚めが悪いっていうか。
「だけどお金が……」
「知ってる人とかでいいモデルさんになるような人、いないの? 金に融通が利く人」
三毛が訊ねると、
「目がぱっちりしてて、可愛い感じの子がいいんだ。可憐でそれでいて元気がある子が……」
なんかこの人、注文が多いんですけど?
元気そうじゃん。
放って置きたい。
妙なことにならなきゃいいけど……。
なんて思いながら、オレも男の人の言葉に耳を傾ける。
「んな調子のいいこと言うなよ。そんなモデルほいほい見つかるわけねぇじゃん」
「…………う~ん」
男の人が唸れば、
「…………う~ん」
三毛も唸る。
サラサラ。
川が穏やかに流れる音がする。
太陽の光に反射してキラキラ水面が輝いている中、
しばらく沈黙が続いていると――。
「いや、いた! 君たちだよ!」
「は?」
「ふぇ?」
「可憐で無邪気で可愛い! 君たちピッタリだ!」
それは唐突だった。
男の人は突然オレと三毛の手を握り締めてきたんだ。
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