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仙蔵、茶虎を可愛がる。(前編)
茶虎を襲った奴らはかなりの下っ端だった。
そこの組を潰すのは造作もない。
そんなことはどうでもいい。
とにかく今は茶虎が心配だった。
帰宅してからというもの、俺の顔色を窺うばかりで口も利いてくれねぇ。
電気を煌々と点けた明るい寝室にいるってぇのに茶虎の顔がよく見えねぇ。
「茶虎? 何かされたか?」
訊ねてみても、
「……なに、も」
俺にしがみついたまま俯くばかりだ。
静かな空間に沈黙が続く。
「……仙蔵さんは……」
どれくらい過ぎただろうか。
茶虎の頭を撫で続けていると、ふいに茶虎が口を開いた。
「どうした?」
「オレの、このカッコに引いた?」
「?」
さて、茶虎は何を言っただろう。
はじめは茶虎の意図している内容がわからず、黙ったままでいると、茶虎はまた、ぽつりと話しはじめた。
「オレ、小太朗が川に身投げしようとしてたのを見つけて、三毛と一緒に助けたんだ」
「ああ」
そうだったな。
内容は本人から聞いている。
心優しい三毛と茶虎は人助けのためにこうしてカメラの被写体の前に立っている。
「まさかこんなカッコ、するとは思ってもいなくて……」
「ああ」
なかなか可愛い。
目尻がつり上がった気の強そうな茶虎は黒髪も似合っている。
ますます美人だ。
「仙蔵さん、は――」
「?」
そこまで言うと、茶虎はまた黙った。
「どうした?」
「軽蔑、した?」
軽蔑?
「どうしてだね? 似合ってるじゃないか?」
惚れた弱みという奴なのか。
茶虎はどんな格好をしていても似合っている。
俺が訊ねると、茶虎は、「え?」と声を上げた。
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