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三毛と茶虎、龍と仙蔵。(中編)

 三毛の肩口に顔を埋める。 「っひ! 助けて龍サン!!」 「仙蔵さんっ! いやだあああっ!」  オレたちが大切なその人の名前を言った時だった。 「三毛!」 「茶虎!」  龍と、仙蔵さんが……来てくれたんだ。 「なんだてめぇ?」 「俺らに喧嘩売るたぁ良い度胸してるじゃねぇか?」  っつ!  火事場の馬鹿力ってこういう時に出るのかもしれない。  仙蔵さんの顔を見たら、オレの拳に力が漲ってくる感じがした。 「仙蔵さぁんっ!」  邪魔だし、どけよっ!  メシッ。 「ぐぼぁっ!」  組み敷く野郎の顔面をグーで殴りつけ、仙蔵さんの胸にダイブする。 「仙蔵さんっ!」 「茶虎ぁ、無事か?」  オレが仙蔵さんに抱きついたら、強い力で抱きしめ返してくれた。 「っ、仙蔵さんっ!!」  ああ、仙蔵さんだ。  夢じゃない! 「よしよし、無事だな。怖かったよなぁ」  ポンポン。  頭を撫でてくれるこの手の温もりが、冷たくなった身体をあたためてくれる。 「も、ダメだって……スカートが邪魔で、蹴りできなくて……オレ、オレ……」  ポンポン。  頭を撫でられれば余計に涙が溢れてくる。  仙蔵さん以外になんて抱かれたくねぇもん。  仙蔵さんに抱きしめてもらってる中、こっそり三毛の方を見れば、  やっぱ龍は仙蔵さんの孫だ。  胸ぐらを引っ掴み、恐ろしい形相で相手を睨んでいる。 「三毛、てめぇ。俺のもんに手ぇ出してんじゃねぇぞっ!」 「龍サン、龍サンッ!!」  今にも射殺してしまいそうな龍の視線。  その中で、三毛は龍の背中にしがみついて泣きじゃくる。  そんなだからだろう。  龍も我に返って三毛を抱きしめる。

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