29 / 64
第四章・4
「服、か。どちらかと言えば、まずは靴や時計、ベルトから選ぶことをお勧めするな」
「小物から、ですか」
二人は、ブティックに来ていた。
ちょっと良い普段着が欲しい、と言う楓に、征生はそんなアドバイスをしていた。
「どんなブランドを身につけていても、履いている靴が安っぽければ台無しだ」
「なるほど~」
「靴を買いに行こう。俺の行きつけの店を教えてやる」
「はい」
楓はルンルン気分でついて行ったが、その店の看板に息を呑んだ。
「フェラガモ……」
「オーダーメイドにするか」
「いえ! いいです! 普通ので、いいです!」
ずらり並んだ革靴の香りに包まれながら、征生と楓は店内を見て回った。
「これなんて、どうだ?」
(36万円……!)
「じゃあ、これは?」
(17万円!)
「こっちのは、どうだ」
「これにします」
7万円のローファーに、征生は瞼を閉じた。
「楓。もしかして、値段で決めていないか?」
「いいえ?」
とぼける仕草も可愛い楓だ。
結局7万円のローファーを買って、二人は店を出た。
ともだちにシェアしよう!