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第四章・5
「次は、時計だが。これは私からのプレゼント、ということにしてもいいかな?」
「そんな。いいです、誕生日でもありませんし」
「俺が楓とこういう関係になった記念、ではダメか」
その言葉に、楓はすっかり参ってしまった。
「時計は、時を刻む。これから、二人の時間をずっと刻んでいこう」
「征生さん……♡」
(楓は、こういうベタな言葉に弱いのか)
内心くすくす笑いながら、征生は時計を後日贈る、と約束して歩き始めた。
そしてブティックに入ると、征生は猛然と楓に試着をさせた。
ジャケットにニット、シャツにカーディガンにスキニーパンツ。
「征生さん、こんなに買ったら持てません~」
「配達してもらおう。次は、指輪だ」
「ゆ、指輪!?」
(それはちょっと、気が早すぎるんじゃないかな。でも、嬉しいな♡)
「いざという時は、武器になる。素手で殴るより、効果的だ」
「あ、そういう意味で……」
ちょっぴり残念なこともあったが、楓は征生と楽しいショッピングの時間を過ごした。
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