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第9話

 逃げてしまったのだ俺は。  姉から、少年から。  町を離れ、家に戻り、毎夜毎夜、自分でした。  少年の姿が頭に焼き付いて離れなかったのだ。  これまで、女の子と何人も付き合ってきたのだ。  でも、まさか、10才位の少年にあれほどまで欲情する自分が許せなかった。  喘ぎ、「やめて」と哀願する声をききたかった。  いや、言わせたかった。  「嫌」ばかり言うあの声を、懇願に変えてやりたかった。  滑らかな白い胸、あの色づいた乳首に、唇を這わせ 、指で撫でさすりたかった。  快感に泣き叫ぶ白い喉に舌を這わせたかった。  姉では出来ないようなことをしてやりたかった。  あの白い尻を押し開き、俺のを突っ込んでやりたかった。  思い切り突きまくりたかった。  どんな声で泣くのだろう。  許してといっても許してやらない。  嫌  ばかり言う声を  もっともっと  と泣いて懇願させてやりたかった。  そして、この手で甘やかしてやるのだ。   そして、あの少年の中に放つ。  何回も何回も何回も。  想像するだけで、何度でも射精出来た。  駄目だ。駄目だ。  父との約束なんかどうでもよくなり始めていた。  もう一度会えば押し倒してしまいそうだ。  姉としたように、俺にも身体をもたれかけてくれるだろうか。    自分の執着が恐ろしい。  こんなの初めてだった。  姉よりも、あの少年のことが頭から離れない。  それが怖かった。    人にこんなに捕らわれることが怖かった。  俺がなんとか町に行く覚悟ができたのは祭りの当日だった。  姉は御輿に載せられ運ばれていく。  それを俺は双眼鏡で確認した。  社のお堂に姉は入っていった。   人々は何かを恐れるように 帰っていく。  チャンスだ。  俺は社へと向かう。  俺はお堂の扉を開けた。  白装束の姉が振り返る。  驚いた顔。  そして俺の顔を見て、何かを納得する。   「私の弟ね。本当の。私に似てるもの」  姉は笑った。  「父がよこしたの?」  俺は頷く。  説明する手間が省ける。  「逃げよう。この祭りで神の花嫁は誰も生き残ったことはないんだろ」  俺の言葉に姉は首を振った。  「いいえ、駄目。助けに来てくれてありがとう。これでも、誰かが私達を助けてくれたならって思ったこともあったのよ」  姉は笑った。  「何故?この町はおかしい。誰かを殺して幸せを得るなんて間違っている」  俺は心からいった。  そんな幸せなんてクソでしかない。   あの町はおかしい。   父は言っていた。  あの町では誰もが健やかに老い、安らかに死ぬ。 突然の悲劇もない。  それはおかしい。  人間が生きていく世界で不自然すぎる。   「そうよ。でもね、私は逃げられないの。逃げたらあの子が生贄になるの」  姉がは言った。   「あの子?」  俺の言葉に姉は微笑む。  「本当ではないけれど、私の大切な弟」   俺は言う。  「分かった、あの子も連れていく」   姉は首をふる。  「距離では逃げられないの。ちゃんと逃げなくてはいけないの。でもどうすれば良いのか私にはわからない」  姉は俺に手を伸ばした。  「私は無理。でも、あの子を助けてね。そしてもう、外へ出なさい」  姉は俺を突き飛ばした。  俺はお堂からはじき出された。  女性の姉の力ではなかった。  「さよなら、私の弟」  扉が閉じる前に、姉がそういって艶やかに笑ったのが見えた。  お堂の扉が締まり、どうやってもあこうとしなかった。   そして、姉の悲鳴が聞こえた。  俺は耐えられず逃げ出した。  その後、あの少年がお堂へやってきたことを俺は知らなかった。  

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