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第14話

 「つまり、救うためには、その花嫁に資格を失わせる必要があるということかな」  教授は上品にまとめた  「ええ、つまり俺はソイツがぶち込んでくれとお願いするところまで追い込んで 、ソイツの中で中出しすれば良いってことですよ」  俺は具体的に言った。  教授は顔を赤らめる。   「その子にそうすれば助かるってことを説明したら同意してくれるんじゃないのか。そんな無理やりなやり方ではなく」  教授の疑問はもっともだ。  「言葉は呪なんですよ。話すことによっての同意では、俺の力がソイツの意見を変えたことになってしまう。言葉で考えを変えるさせるのは、この場合ではソイツの意志にはならないわけです。オレが何か言った何か呟いた、それらすべてが呪文になる可能性があるわけです」  俺は説明する。   「花嫁達が名前を奪われることも、彼等の持つ、名という力を削ぐという意味もあるんです」  なる程、と教授はそこは納得する。  「で、何故仮面がいるんだね」  教授がどこかの国からお土産で持ってきた仮面を俺に渡して、質問する。  「俺の顔は姉に似てるんですよ。死んだ姉のことを考えたら、絶対にソイツは資格を失うような真似はしないですからね」  姉を死なせて自分だけ助かろうとは思わないだろう。  花嫁達が花嫁であるのは、自分達がそうであることを受け入れているということが最大の呪なのだ。  どんな神話の生贄も、泣き悲しみはしても、生贄であることを拒絶し、戦う者はいない。  それをするのは神や悪魔や化け物を倒す、勇者だけだ。  「だから、誘拐して監禁してその子が自主的に同意してくれるようにする、というわけか。でも、そんなことするのは犯罪、じゃないのかな」  教授は心配そうに言う。   40過ぎで教授になったのはこの人が優秀すぎるほど優秀で、オマケにカリスマもあって大学内でも権力を掌握していて、テレビなどでも人気があるからなんだけれど、  所詮学者。  イマイチずれてる。  犯罪にきまってるだろ。  でもそうは言わない。 「でも、教授、人命に関わることですよ」  俺は強く言う。  「そうか」  教授は納得する。  人の命には変えられない、とあっけなく山荘の鍵を貸してくれた。  ただ無理やりにはしないんだな、とは何度も確認された。    乱暴なことも、相手が嫌がることもしないんだな、  相手の意志を尊重するんだな、と。  俺は請け合う。  そう、無理やり【挿入】はしない。  だけど、それは言わないでおこう。  繋いで監禁して、なんて言ったら絶対に協力してくれない。  教授には善良な想像をしていて貰おう。  結果オーライだ。  「でも、君ならそれほど難しくなさそうだな。君はその、あれだ」  教授には下世話なボキャブラリーがあまりない。  「ヤリチンですか。色事師ですか。否定はしませんよ。でも、テクニックだけで人の心は変えられませんよ。Avやエロ漫画じゃあるまいし」  俺は教授のボキャブラリーを補ってやる。  教授はまた顔を赤らめる。  育ちが良いのだ。  熊みたいにヒゲを生やして、白髪混じりだから年齢よりも老けてみられるが、髪を少しそめて、ヒゲをそれば、相当若くなるはずた。  苦味走ったいい男なのに、オッサン臭い格好ばかりしているのが本当にダメだか、何を言っても聞かない。  「前から思っていたのだが、相手の子は男の子なのだろう?ゲイなのか?君は」  無邪気に教授はきく。  「バイセクシャルですね。でも教授は許容範囲外です。可愛くないから無理です」  俺は答える。  「範囲内と言われても困るが。じゃあ、あの、彼とは、あの」  また教授が口ごもる。  なる程そこを聞きたかったのか。   彼か。  愛弟子だしな。  俺はの事は良くも悪くも自分の学生だとは思ってないからな、教授は。   「セフレですよ。セックスフレンド。お互 ギブアンドテイクの」  俺は断言する。  この鈍い教授が気付いてしまう位、彼は俺にのめり込んでしまったか。  「酷いように聞こえるのは私の気のせいかな。彼はその、君をとても慕っているように見えるんだ が」  教授が彼を気にかけているのは知っている。  俺はため息をつく。  「俺が教えこみましたからね。色々と。身体の相性もいい。彼はセックスの良さと愛情を取り違えているだけですよ。後、ゲイであることを受け入れられたことがなかったから、初めての相手に舞い上がっているだけです」  俺の言葉に教授は首をかしげる。  「やはり酷いように聞こえるんだが」  教授、それは間違っていませんよ、と俺は思う。  俺のテクニックだけで彼があそこまで俺に服従するわけじゃないのは俺も分かっている。  最終的にセックスってのは、感情と結びついているものだし。  「俺は彼に何も期待させたり、思わせぶりなことはしたことはありませんよ。それに、彼はいつか俺と離れる時傷付くかもしれませんが、それでも 俺に会うことで、セックスを恐れたり、自分がゲイであることに罪悪感を持っていたことからは解放されたと思いますよ」  俺は自己弁護する。  彼はすっかり垢抜けた。  ゲイであることを隠そうともしなくなり堂々としている。  優秀な学生だと誰からも認められるようになった。  ゲイだと陰口を叩かれたりもしているだろうが、今の彼には強さがある。  誰かに見つかることを恐れてた、初めてあった時の彼とは違う。  少なくとも、俺が与えているのは快楽と酷さだけではない、と思いたい。  まあ、会う度酷いことをしているのは自覚している。  「あの顔にあの身体です。性格もいい。俺が色々仕込んでるし、俺が離れたら誰かがすぐに捕まえて、優しくしてくれますよ」  優しい夜を優しい男に教えてもらえばいい。  ちょっと惜しく思いながらも、俺は心から思っている。  「し、仕込むって」  教授は色々想像しすぎているらしい。   「具体的に教えましょうか」  俺はニヤリと笑う。  「いや、いい。でも、だ。君のプランをその子が受け入れなかった場合の計画は?」  教授は尋ねる。  「そうそう、君は私と初めてあった時、言ってきたね。この学問を勉強しようと思ったのは神を殺す方法をさがしているからだって。神を殺す方法は見つかったのかな」  そう、俺は見つけなければならない。  神を殺す方法を。      

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