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第17話

 祭りまで後何日なんだろう。  僕は思う。  9月の最終日に祭りは行われる。  8月半ばに攫われたから、多分、今は9月の初めくらいかな。  さすがに寒くなってきたので、男はバスローブのようなモノを僕に与えた。  可愛い妹のことを考える。  元気にしているだろうか。  なんとしてでも、帰らなきゃ。  あの子を今年の花嫁にするわけにはいかないんだから。   僕は秋の気配がしてきた山の景色をテラスから眺めながら決意する。  両手両足の鎖。  これさえなんとかなれば。   最近の男はひどく優しい。  夜は僕と寄り添って寝るようになった。  明るくなり、光がさす前には部屋から消えるから、素顔は見えない。   僕を胸に抱きかかえるようにして眠り、時折目覚め、ただ甘やかすように僕の背中を撫で続ける。  その行為は甘さがあり、僕は混乱する。  僕を追い詰めるように抱く時とは別人の様だから。  まだ、男に挿入はされていない。  男の目的がうっすらとわかってきている。  僕を花嫁にしないことが男の目的だ。  ならば、さっさと挿入すれば良いものだとも思うんだけど。   僕がいいと言うまでは入れないつもりだ。  僕は怖い。  あの男にされることはすごく気持ちよくて。  いつか言ってしまうんじゃないかって。  でも、僕は捧げられなければならないんだ。  姉様のように    男は最近、僕の唇ばかり触れる。  今もだ。  僕と男は向かいあうようにベッドに横になっていた。  指が唇をなぞり、柔らかく唇をこじ開け、僕の口の中へ入ってくる。  そして、指で僕の口腔を貪る。  んっ  それは気持ちよくて、僕は 吐息をもらしてしまう。  指でそこを犯している間、男は切なげなため息を ついたりするので  彼がしたいことが本当は別なことなんだろうと僕は思う。   最近は追い詰めるだけじゃない、こんな甘やかすような触れ方も男はしてくるようになった。  今日は仮面を外した夜の行為だ。  男は吐息を零してた。  ふと、僕の唇に指ではない何か柔らかいものが触れた。  かすめるように何度も。  僕はそれが男の唇だと知る。  それは僕の初めてのキスだった。  僕は一瞬怯える。  精を受け入れたり、注ぐことは許されないからだ。  キスはどうなんだろうと姉様と話合ったことはあった。  僕は姉様としたくて。  姉様が「体液の交換になるものね、やめておきましょう」と言ったので結局。姉様とキスしたことはなかった。   でも、唇を触れさせるだけなら。  こんな風に触れ合うだけなら。  きっと。  触れてくる男の唇を感じる。  そっと触れて、離れるだけの優しいキス。  なんだか泣きたくなった。  暗闇の中の男の顔に手を触れた。  なんだか、触れたくて。  男が驚いたように、身じろぎした。  今度は僕から男の唇にそっと唇で触れ、離す。  男は息をのんだ。  僕をそして強く抱きしめた。  その夜は僕達は触れるようなキスだけを互いに繰り返した。  それはひどく甘やかな時間だった。  

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