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第23話

 彼はとても魅力的だが、酷い男だ。  良いヤツだが、酷いことを平気で出来る男だ。  私はそう思っていた。  ある一点では  どうしようもなく酷い男だ。      彼を自分の学生だとは思ったことはない。  彼は必要な知識を私から手に入れるためだけにここにいることは分かっていたし、おそらく、この学問自体に本当には興味はない。  でも学問から引き出した知識を使い、実にユニークな文章が書けたし、とにかく本当に優秀だった。  だから、テレビや雑誌の仕事を減らすために、彼を紹介した。  今、学生ながら文筆業で成功しているのは彼の実力だ。  初めて出会ったのは彼が高校生の時だった。  バーで一人で呑んでいたら、若者が声をかけてきた。  「学者の  さんですよね」  とても綺麗な顔の青年だな、と思った。  なんとなく、ちょっとした話が盛り上がり、一緒に飲むことになった。  私は彼が未成年だとは知らなかった。  おそらく、全て彼の計画通りだったのだ。確かめていないが間違いない。   「神様ってどうやったら殺せますかね」  おそらく彼はそれを尋ねるためだけに私に会いに来たのだ。  年は離れているが、うちの学生になる前から彼は友人だった。   学生扱いしないのはそのためなのかもしれない。  学生になる前から助手代わりに使っていた。  頭がいいし、話も上手い。  気が利くし、思いやりもある。  でも、彼は酷い男だ。   でも、私は彼が嫌いになれない。  あんな酷いところを見てしまったのに。  前から彼が酷い男なのはわかっていて、でも、嫌いにはなれなかったのだ。  そうあの日だって、  彼は道端で男の子を犯していた。  電柱の影にいるのが彼だとすぐ気がついた。  見慣れたロングコート。   大学の近くの通りだから彼がいてもおかしくはなかった。  用事もあったので私は声をかけようとした。  その時、気付く。  彼が一人じゃないことに。   ぱっと見には、恋人同士が物陰で抱き合って甘えあっているように見えた。  おそらく通りを通る人々はそう思っていただろう。  まさかこんなところでそんなことをしてるとは思わないだろう。  私も信 じられなかった。  彼はうまく長いコートで隠していたけれど、その動く腰、そして、よく見れば、彼に背中から抱えられるようにしている人物が声を殺してはいたけれど、セックス特有の表情をしていたことからもそれはまちがいなかった。  彼はもう人目が気にならなくなったのか、激しく腰を叩きつけはじめた。    それは明らかに淫らなセックスで、私は思わず誰かに見られていないかと辺りをみまわした位だった。  アイツの相手もそれに身をしならせて応えていた。  アイツは私の学生の一人を犯していた。    

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