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第30話

 オレは自分の胸を弄る。  両手で胸を撫でまわす。  最初はこうやってやんわりと回すように触れていけば、灯るような快感がうまれるのをオレは知っている。  はぁ  はぁ  吐息が零れだす。  生まれた快感を逃さないように、片手はそのままやんわりと撫でながら、もう片方の親指は乳首を潰すようにして回していく。  ああ、  オレは声を上げる。  腰が勝手に揺れる。  この快感に乗る。  あの人に何度となく、自分でイくことを教えられてきたから、オレはたやすく自分から快感をひきだせる。  あの人が執拗に教えこんだから、胸と穴だけでももうイケてしまいそう。  あの人の目の前で、何度となく自分を弄り、達してみせた。  「エロくて可愛い」  いつもあの人がそう言ってくれるから、そうした。  両手 で乳首を強くつまみあげれば、また快感の波が生まれ、  ああ、  オレはまた、声をあげる。     オレはまだ町にいた。  祭りの為に帰ってきたと言っている以上、祭りまではいなくては。 それに何より、あの子が消えてから姿を消したなら怪しまれる。  町に帰って、以前のように過ごすことはオレには酷くつらかった。  都会でオレはゲイとして生きているのに、ここでは前のように偽らなければいけない。  何より、身体をもてあましていた。  以前のようなコソコソ隠れてするオナニーなんかではオレはもう満足できない。  あの人がこんな身体にしたんだ。  恨めしく思う。  あの人に散々弄られイカされ、快楽を教え込まれ、  「自分でやってみせて」  あの人に囁かれて、オレは逆らえなかったから、オレは淫らに自分でイく方法を覚えてしまった。  実家でそんな真似はできず、オレは今日、こっそりここへ来た。  町の図書館の資料室。  町では誰も図書館にはいかない。  昔からオレしかつかってなかった。  このプライバシーのない町で、唯一 の 密室だと言えた。  そして、この資料室の鍵を勉強と称して借りて、閉じこもり、自分を慰めている。  埃っぽい床に座り、身をよじらせて。  こんな身体にしておいて、オレはもう二週間以上もあの人に抱かれていない。  酷い時には毎日のように呼び出され、抱かれてきたのに。   身体にたまった欲望を、オレは自分で処理しなければならない。    あの人に抱かれたかった。  酷いことばかりされても。  あの子をあの人は今、抱いているのだろうか。  挿入することの危険さは知っているから、入れはしないだろうけど。  でもあの人があの子の白い身体に手を伸ばさないはずがない。  オレは片手を乳首ごと胸で回すように這わせながら 、もう片方の手の指を、後ろの穴へと伸ばした。   あの子のここにも、あの人は指をいれているのだろうか。  ローションをなじませた穴の周りをなぞる。  それだけでも声が漏れる。   指を入れて回す。  はあ  声が零れる。  もうよく分かっているそこを、こするように指を回せば    ああ、   いい、   声が出る。  あの人が見てると思えばいい。  見てる。  そう思うだけで感度が上がった。  気持ちいい  声が零れる。  胸を弄りながら、穴に指を出し入れすれば 、時折襲う痙攣するような快感を耐えるように味わう。  いっちゃう、   もうイク  オレはあの人の前だと思えば乱れられた。  どんな卑猥な言葉も口に出来た。     今頃、あの子の胸を弄りながら、穴をなぶっているのかな、あの人。  焼け付くような思いを消すために快感に溺れる  あの人の名前を叫ぶ。  あの人がオレにこれを教えたから、 今オレを抱いているのはあの人なんだ。  オレは立ち上がっ た前をしごきながら、指を穴の中でまわした。  この指の動かし方もあの人が教えたから、これはあの人の愛撫。  ただひたすらあの人の名前を呼び続ける。  あの人はここにいなくても、オレを抱いている。  そう思いながら。  前と後ろ、両方の刺激で追い上げる。  オレはあの人の名前を呼びながら、射精した。  快感はあった。  でも足りない。  あの人がたりない  酷いことを言われても、されても、  あの人をこの身体で感じたかった。  乱暴に貫かれても、あの人を中で受け止めたかった。  髪を撫でて、「可愛い」て言って欲しかった。  床に倒れ、切なさに泣いていた。   逃れられない。  この気持ちからは。    携帯が鳴り、あの人の番号を示していた。  「助けて欲しい」  命令ではなく、あの人にオレは初めて懇願された。        

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