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第37話
さすがに、もう立てなかった。
血を失いすぎた。
樹にもたれこみ、座りこむ。
オレは女の子に言った。
「いいかい、このままリボンを追っていくんだ。一番最後の場所に、顔だけは綺麗な最低なお兄さんか、髭の熊さんみたいなおじさんのどちらかがいる、その人が兄様のところまで連れて行ってくれるよ」
オレの言葉に女の子は首を振った。
ホロホロと涙がこぼれる。
良く泣く子だなぁ
オレは微笑む。
「行って。オレは少し休んだら行くから」
その子はまだ行こうとしない。
「行くんだ!」
怒鳴った。
大きな瞳を涙でぬらしたまま女の子は泣きながら走っていった。
これでよし。
犬はオレの方に来るだろう。
あの子ではなく。
血の匂いをまきちらしているから。
血に狂った犬がオレをどうするのかは明白だけど。
念願は叶ったし。
オレは少し笑う。
あの人に優しく抱かれた夜を思う。
最期に思い出すのがコレなのか。
でも、オレ、ちゃんとオレになれたと思うんだ。
これでやっと。
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