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第39話

 俺は自己嫌悪に陥っていた。  隣りでぐったりと横たわるのは、アイツじゃない。  アイツのワケがないのに。  彼にもう一人の花嫁の連れ去りに協力を頼んだ。  それも祭りの前日にそれをして欲しいと。  彼の協力がなければムリだった。  彼は町から一番近い都市のホテルを指名し、そこで落ち合って話あうことになった。  「いいですよ」  彼はあっさり引き受けた。  「ただし、オレをここで抱いて下さい」  ホテルの部屋に呼ばれた時点で、そんな気はしていた。  ベッドに腰かけて、話をしていた時から、もう彼の目が熱っぽいことも。  いや、それは俺も同じで。  何度となく抱いた身体が隣りにあることは、手を伸ばしてしまいたくなって。  「それは、だな」  俺はしどろもどろに言い訳しようとするが見つからない。  散々好きなように彼を抱いてきた俺にどんな言い訳があるというのか。  彼は自分でシャツのボタンを外して、胸をはだけた。  扇情的に自ら自分の胸を弄る。  たまらなかった。  この何日も、禁欲生活を強いられて、アイツに指一本も触れられない俺には刺激的すぎた。  彼がズボンを下ろして自分のモノを俺の前で扱き、胸を弄りますはじめた。  それは淫らで 目が離せない。  ああ、  いい、  彼がそう喘ぎながら俺の前で自ら果てるのは、俺が仕込んだだけあって、堪らなくエロくて。   彼がにじりよる。  「どうしたんですか、いつものように命令して下さいよ、咥えろって」  俺は彼の舌を知っている。指も。口腔も。  その誘惑はたまらなかった。  「だめなんだ」  俺は血を吐く思いで言った。  彼の目が眇められた。  「あの子のせいですか」   冷たい声だった。  「オレの協力がないとムリなんでしょう?」  彼は身体をすりよせる。  俺は顔をそらす。  裸の胸と剥き出しの下半身が扇情的で。  彼の指が、オレのTシャツをまくりあげ、オレの胸に触れた。  「あなたの肌だ、熱い」  彼は頬を俺の胸にすりつけた。   俺は両手で彼の肩をつかみ引き離す。  ダメだ。  ダメだ。  「俺は君には酷かったと思っている」  俺は上手く言葉を紡げない。  人にあやまったことなどない。  いつも手酷く捨ててきた。  彼のことも可愛くて、エロくて気に入ってたし、人間としても好きだったが、俺の道具のように扱ってきた。    今更なんだが、今更なんだが。  「そんな言葉、聞きたくないんですよ!」  彼は怒鳴った。  「こっちは何日もアンタとしてなくて溜まってるんですよ。人を道具みたいに使ってきたんです、アンタも道具になって下さいよ」  俺は正直驚いた。  あの大人しい彼が、ここまで感情を露わにしたことはなかったからだ。    「俺、アイツが好きなんだ」  俺はポロッと言った。  言ってみて、初めて自覚する。  ああ、そうだ。  だから、したくてたまらないのに、したくない。  彼の目が見開かれる。    ポカンと口が開かれる。  「だから、もう少しマシな人間になりたくて。今更だけど」  言うに事欠いて、一番最低な行為を繰り返した彼に俺は何を言っている。  彼は俺を見上げて笑った。  「今更、何言ってるんですか」  だが、俺が本気なのがわかったらしく、彼は暗い目をして言った。  「オレの協力が欲しければ、今日はオレの命令を聞いて下さい」  彼が本気なのが分かった。  彼の言うことを聞かなければ、彼は協力してくれないだろう。  「オレを抱いて。彼を抱くみたいに。ううん、彼だと思って」  彼の手が俺のシャツを脱がせていく。  俺はさからわなかった。

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