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第42話
冷たくなっていく身体、もうすぐ死ぬのだろうか。
オレは笑う。
最後にしたセックスよりも、あの後二人でした他愛ない話の方が、あの夜で一番良かったなんてこと考えてて。
オレがあの女の子を助けることに協力したのは、あの女の子がオレだったからだ。
ここにいるためには、自分を殺さなければならないオレと同じだったからだ。
自分達の幸せのために、何かを殺さなければならないこの町にヘドがでそうだった。
オレはこの町が嫌いだ。
「 」
オレはあの女の子の名前を呼んだ。
オレが返した名前を
花嫁なんかじゃなくて、自分として生きて欲しいな。
死ぬ前につぶやくのが、好きな人の名前ですらないのがオレらしい。
犬のうなり声がした。
来たな。
オレは闇に目を凝らす。
さあ、殺せよ。
喰われるのは嫌いじゃない。
散々喰われたからな、性的な意味で。
皮肉っぽく思う。
犬が地面を蹴りとびかかる音と、
犬が一瞬啼いたのは一緒だった。
何も見えない闇の中で、声がした。
「大丈夫か!」
オレは助けが来たことを知った。
あの人ではなくて、教授だったけれども。
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