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第44話
「はぁ?逃げないってどういうことですか。こっちは腹に穴まであけて、この子を連れて逃げたっていうのに!」
オレは怒鳴った。
オレは教授の車の後部座席で瀕死の状態だったけど、これは怒鳴らずにいられなかった。
オレにしがみついたままの女の子が、ビクッと一瞬震えたけれども、オレからは離れようとはしない。
「落ち着け。その子は明日町を出ると死ぬ。花嫁は祭りの日に町にいなければならないから。だから、逃げたと見せかけて、山の中に隠れるんだよ」
暗視スコープと、ボーガンを助手席に放り出し、教授は車を走らせた。
コレでオレを見つけて、犬を撃ったのか。
「フィールドワークで色々危険な国や地方にも行くんでな、いるんだよ」
簡単に説明してくれた。
エンジン音が静かだ。
「電気自動車ですか」
オレは納得するこれなら、町の連中は車で去ることに気付かない。
「君を一番近くの病院に下ろしたら、この子と山の中で明日の祭りが終わるのを待つ」
教授の言葉にオレは呆れる。
「町の連中がその子が見つかるまで、山の中だって探すに決まっているでしょう」
オレの言葉に教授はしばらく黙った。
「【あの子】が祭りに戻るから、町の連中は【この子】にもうそんなに構わないよ。一番大切なことは祭りが行われることなんだろう」
「はぁ!?」
オレは怒鳴る。
あの子が戻って祭りに参加?
どういうつもり?
今更?
こちらもオレの苦労を無駄に?
「その調子なら、病院までまだしばらくかかるけど、意識は保っていられそうだな。絶対に寝るなよ」
「どういうことなのかわかるまで、死んでも死にきれませんよ」
オレは怒りで意識を支えていた。
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