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第47話
彼が眠らないように話しかけ続ける。
眠ればおそらく目を覚まさない。
「あの子や君の話から推測すると、お堂には御神体はない。祭りの日、花嫁が御輿に乗せられてお堂 で山から来る神を待つ」
「言いたいことはわかりますよ。神殿のない拝殿のみの社。そうですね、実体を持ったモノの存在がなければ山を神としていると推測するでしょうね」
さすがに優秀だ。
この町の社の起源は、記録にはないが、おそらく縄文時代からであることもありえる。
古代神道だ。
「そう、山こそが神なんだ。神の化身は山から来る、つまり」
「磐座が山の中にある」
彼が続けた。
「いわくら?」
女の子がきょとんと繰り返す。
「この世界と神様の世界の境目みたいなものだよ。ものすごく簡単に言うと。大昔の人たちは大きな岩や、巨大な樹を神様がこの世界にくるための場所だとして崇めたんだ」
彼が説明する。
「山は禁足地なのだろう、本来は」
「子供は決まり事を守らないし、脱出者を防ぐために定期的に見回ってるし、狩猟の季節に走り回ってるけど、基本はそう」
彼は頷く。
「磐座があり、神はそこからお堂に来る。ならば磐座を壊してしまえばいいのではないのかって言うのがアイツの仮説だ」
「乱暴すぎる」
彼は即座に却下する。
私の意見と同じか。
まぁ、彼の方がアイツよりは優秀なのだ。
「でも、それしか可能性がないのも事実でね」
私はミラー越しに彼を見つめる。
持つだろうか。
持ってくれ。
「教授、でも確かにオレ達は聞かされてましたよ。祭りの夜には絶対に山に行くなって。」
彼が続けた。
「祭りの夜はあそこは異界なんだって」
青ざめたまま、彼は言った。
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